62歳で出したロバート・フィンリーのデビュー作には、ヤラれました。
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その歌声には、苦渋に満ちた人生が凝縮されていて、
ドロリと溶け出してくる情感と、それに呼応するサザン・ソウル・サウンドに、
ただただ泣くことしかできませんでしたからねえ。
その後フィンリーは、ブラック・キーズのダン・オーバックにフックアップされ、
17年にオーバックのプロデュースで2作目を出していたんですね。
本作が出るまで、そのことを知らなかったんですけれど、
その2作目同様、ナッシュヴィルでレコーディングされたのが、今回の新作。
もちろんプロデュースは、2作目に引き続き、ダン・オーバックです。
デビュー作では、アル・ギャンブルのハモンドとハワード・グライムズのドラムスに、
ドキドキしたものですけれど、こちらでは、ボビー・ウッドのキーボードと、
ジーン・クリスマンのドラムスというメンフィス・ボーイズの面々が脇を固めていて、
聴き応え十分。
今作はサザン・ソウル一直線のサウンドというより、
カントリー・ロックの要素も感じさせるサウンドで、
アーリー・セヴンティーズのスワンプ・ロックをホウフツさせますね。
ジャケット・デザインだって、70年代ロックの雰囲気じゃない?
で、冒頭の3連バラードから、ノック・アウトをくらいました。
いきなりのファルセットに、ええっ!と驚かされ、
しょっぱいバリトン・ヴォイスに歌い繋いでいくところで、もう持ってかれちゃいました。
地声と行きつ戻りつを繰り返して、ラストでまたファルセットをかまして、
クライマックスに向けて登りつめていきます。
う~ん、芸域を広げてんなあ。
そして、ヒル・カントリー・ブルースの風味を取り入れているのは、
ダン・オーバックのテイストだろうな。
R・L・バーンサイドのバックで長年プレイした、
ギタリストのケニー・ブラウンとベーシストのエリック・ディートンが参加して、
ヒル・カントリーらしい催眠グルーヴが味わえます。
ワン・コードの‘Country Child’ なんてその極みで、
ケニーのスライドが冴えまくってますよ。
‘Sharecropper's Son’ から‘My Story’ と続く自叙伝2曲が、本作のハイライト。
ソウル・シンガーとしてスケール感を増した歌いっぷりに、
当意即妙に応えるバックは、黄金時代のハイ・サウンドを思わせ、胸が熱くなります。
オーバック、いい仕事してんなあ。
歌に、演奏に、パッションがみなぎり、ハートフルなアルバム。
大いに泣かせ、心を熱くさせてくれます。
Robert Finley "SHARECROPPER’S SON" Easy Eye Sound EES015 (2021)