アメリカ在住ナイジェリア人ドラマー、トーシン・アリビサラの18年作。
ローパドープから出ていたんですね。知らなかったなあ。
セッション・ドラマーとして活躍している人で
フェミ・クティの“SHOKI SHOKI” や
フェラ・クティ・トリビュートの“RED HOT + RIOT” で、
トーシンのドラミングが聞けるほか、
イェルバ・ブエナの大傑作“PRESIDENT ALIEN” でとりわけ印象的だった
アフロビート+ラテン・ヒップ・ホップの‘Fire’ で叩いていたのが、トーシンでした。
これまでアフロビート関連のレコーディングが目立っていただけに、
トーシンが08年に自主制作で出した初リーダー作は、意外でした。
ドラムスを核にした、ドラム・クリニックのようなアルバムだったんですよね。
トーシン自身が語りを入れたり、男女コーラスを配したり、
バラフォンやパーカッションを演奏をする曲もあるんですが、
メインはトーシンのドラムス。
これを聴くと、かなり繊細なドラミングをするプレイヤーだということがわかります。
リム・クリックの音質がとてもきれいで、
軽妙なサウンドの奥義は、しなやかなグリップにありそう。
アフロビートからジャズやヒップ・ホップを柔軟に横断できる、
洗練されたスタイルを確立しているドラマーです。
そんなヴァーサタイルな才能が、18年作に発揮されています。
アメリカのメリーランドとナイジェリアのレゴスで、
別々のセッションでレコーディングされています。
レゴス・セッションでは、ドラムスはマイケル・オロイェデに任せ、
トーシンはヴォーカルに専念。バークリーで学んだマイケル・オロイェデは、
ラバジャやマーカス・ミラーとの共演歴もあるレゴスのトップ・プレイヤーの一人です。
レゴス・セッションには、シェウン・クティ&エジプト80のベーシストのカヨデ・クティが
参加しているほか、昨年リーダー作“AFRICA TODAY” を出した
トランペット奏者のエトゥク・ウボンが、フリューゲル・ホーンを吹いています。
アフロ・ジャズの‘Sunday Evening Mood’ の熱演も聴き応え十分ですけれど、
レゴス・セッションの白眉は‘Bekun Pe’ かな。
南アのジャイヴとハイライフのメロディを合体させた、魅力的なトラックです。
そしてメリーランド・セッションでは、オープニングのアフロビート‘Oro Ajoso’ が
キレまくっていて、実にクール。う~ん、カッコイイねえ。
続くタイトル曲は、トーキング・ドラムをフィーチャーしたアフロ・ソウル・ナンバー。
トーシンのポリリズミックなドラミングが、めちゃくちゃシャープで、
フィル・インの小技も利きまくり。バランスの良さといい、本当にいいドラマーですねえ。
ローパドープから出ていたのに、日本未入荷でまったく話題にならなかったのがナゾな、
アフロ・ソウル・ジャズの傑作です。
Tosin Aribisala "AFRIKA RISING" Ropeadope RAD403 (2018)
Yerba Buena "PRESIDENT ALIEN" Razor & Tie 7930182894-2 (2003)
Tosin "MEAN WHAT U SAY" Tosin Aribisala no number (2008)