15年も前に出ていた、知られざるガリフーナの名作を発見しました。
ガリフーナの歌を歌い継いできた家系に生まれたサリー・エンリケス・レイズが、
亡くなった母親セミオナを偲んで制作したアルバム。おそらく自主制作盤でしょう。
アルバム冒頭で、サリーがアルバム制作の意図を述べています。
ジャケットには、サリーの名前が明記されておらず、
ライナーのクレジットに小さく記名があるのみ。
『セミオナからの贈り物』というタイトルと、
母親セミオナのポートレイトが、ジャケットを飾っています。
サリーが歌うストーリーテリングのよう曲もあれば、
姉のヴァージン・エンリケスと甥のガリフが囃子役を務め、
コール・アンド・レスポンスで歌うダンス・トラックもあります。
語りが途中に差し挟まれる曲など、
さまざまなタイプのガリフーナの歌を聴くことができます。
サリーやヴァージンの自作曲とともに、母が作った曲も4曲歌っていて、
そのうちの2曲はレコーディングされ、シングルになったとのこと。
伴奏は、ガリフーナ・ドラムの叩き手であるグレン・Q・ガルシアと
クラベスやマラカスなどのパーカッションを担当するスパイス・キラの二人が
多重録音をして、アンサンブルを作っています。
パカン、パカンと乾いた高音を響かせるドラミングがシャープで、
前へ前へと疾走するリズムに血が湧きたちますねえ。
多くのレパートリーは、打楽器のみのオーセンティックなガリフーナですが、
シンセサイザーを取り入れて、ポップに仕上げたトラックもあって、
これがとてもいいアクセントになっています。
サリーのサビの利いた歌声からは、潮焼けした肌の匂いが香ります。
ガリフーナ文化を伝えてきた、ベリーズの家族の物語が詰まったアルバムです。
Sally Enriquez Reyes "TIDEWESE SEMIONA" no label no number (2006)