マリアーナ・アイダールの19年作が面白い。
北東部音楽をベースに、エレクトロやダブの要素を巧みに取り入れた作品で、
ノルデスチ・ポップを21世紀ヴァージョンに更新したサウンド・センスが新鮮です。
サンフォーナにザブンバ、トリアングロという、
古典的ともいえるフォローの編成を保持しつつ、
エレクトロやシンセ・ベースをさりげなく使って、現代性を加味しているんですね。
マリアーナはサン・パウロのシンガー・ソングライターですけれど、
本作では自作曲ばかりでなく、ノルデスチの作家の曲も取り上げています。
なんでも、マリアーナがプロになって最初に入ったバンドは、
フォローのバンドだったそうで、MPBやサンバ以上に、
ショッチやフレーヴォに愛着を持っている人だったんですね。
ドミンギーニョスが師匠であり、大切なメンターだったというのだから、
そのノルデスチ愛はホンモノです。
エルバ・ラマーリョをゲストに招いた曲もありますけれど、
とりわけ印象的だったのは、アクシオリ・ネトの名曲‘Espumas Ao Vento’ のカヴァー。
これは、泣けました。続く‘Represa’ も哀愁味たっぷりで、グッときましたねえ。
フォローというと、陽気なダンス曲ばかりになりがちなんですが、
こういうサウダージ感たっぷりの曲を選曲したことによって、
アルバムに奥行きを生み出しています。
マリアーナ・アイダールといえば、
マリーザ・モンチやアドリアーナ・カルカニョット以来の
大型新人という触れ込みで出てきた人でしたよね。
ぼくはこの二人がサンバを扱うアプローチに抵抗感をおぼえてならないので、
正直マリアーナも、斜めに見ていたところがありました。
アルバムのゲストに、ぼくの苦手なカーボ・ヴェルデの女性歌手、
マイラ・アンドラーデを呼んでいたりするから、もうなおさら。
そんなこともあって、これまでちゃんと聴いてこなかった人ですけれど、
このアルバムで聴ける北東部音楽に対するアプローチは、正統派。
う~ん、こういう人なら、サンバにアプローチしても抵抗感はないかも。
これからは、ちょっと意識して聴くようにします。
Mariana Aydar "VEIA NORDESTINA" Brisa BRISA0005 (2019)