こういうオーソドックスなハードバップを聴くのは、ひさしぶりな気がするなあ。
ギリェルミ・ジーアス・ゴメスは、劇作家ジーアス・ゴメスの息子で、
テレビ・グローボの音楽プロデューサーを91年から務めるという、
ヴェテラン・トランペッターにして作曲家。
すでに7枚のソロ作を出していて、本作は最新作。
といっても、3年前に出たものなんですが。
初めて聴く人ですけれど、トランペットのプレイは、堅実というか端正で破綻がなく、
きわめてお行儀のいい演奏ぶり。バークリー卒という経歴も、ナットク感ありあり。
旧知らしいメンバーとともに、肩に余計な力が入っていないリラックスしたプレイで、
スリルも熱さもきちんとありつつ、整ったアンサンブルを聞かせています。
安心して聞くことのできる安定感は、ヴェテラン・ミュージシャン揃いの賜物でしょう。
ここでフィルが欲しいなと思っていると、的確にフィルを入れてくるドラムスや、
トランペットに並走して、対位法的なラインを鮮やかに入れてくるテナー・サックス、
軽快なドラミングに太い音色で応えてグルーヴを生み出すベース、
シングル・トーンでひんやりとした空気感を醸し出すピアノ、
そして、ブラジルのジャズには欠かせないパーカッショニストもちゃんといて、
サンバではクイーカを、マラカトゥではトリアングロを使って、盛り上げています。
そしてこのアルバムの良さは、ギリェルミが書く楽曲の良さでしょう。
ハードバップらしいメロディアスな曲揃いで、
抒情味あふれるバラードの美しさも、みずみずしいですねえ。
個人的に、最近ではすっかり耳にしなくなったハードバップですが、
こういうフレッシュなのに当たると、いいもんだなあと再認識させられますね。
ハードバップのお手本のようなアルバムです。
Guilherme Dias Gomes "TRIPS" Guilherme Dias Gomes GDG07 (2018)