80歳を越してなお衰えを知らぬ、その創作意欲。
かつてはジャズ・サンバからアフロ・キューバン、今度はアフロビートに挑戦ですか。
70年代後半から四半世紀に及ぶ長い隠匿を経て、
90年代末に現場復帰してからのドナートの活躍ぶり、ハンパないっすね。
ボサ・ノーヴァの音楽家として語られることの多い人ですけれど、
この人の本質は、ハード・バップのピアニストであって、作曲家にありますよね。
初期のドナートのレコードを聴いている人なら、それがわかるはず。
この人はボサ・ノーヴァの音楽家じゃなくって、ジャズ・ミュージシャンですよ。
59年というボサ・ノーヴァ・ブーム真っ盛りのブラジルを飛び出して渡米したのも、
本格的にモダン・ジャズの環境に身を置きたかったからでしょう。
ボサ・ノーヴァ・ブームをうまく利用して、
ジャズ・シーンで活躍したところはセルジオ・メンデスと双璧で、
ボサ・ノーヴァで食う気なんて、さらさらなかったんじゃないかな。
セルジオ・メンデスがのちにポップ・マーケットに突破口をみつけたように、
ドナートもシリアスなジャズに向かうのではなく、
ジャズ・ファンクに接近していきましたよね。
のちにレア・グルーヴ扱いされるようになったのもそれゆえで、
ポップなセンスを持っていたドナートの面目躍如でした。
ここのところアクースティック路線のアルバムが続いていましたけれど、
今回はサンパウロのジャズ・ファンクのビッグ・バンドとの共演。
冒頭から、トニー・アレンばりのドラミングが飛び出して来て、おおっ!
ギターのカッティングもやたらアフロビートぽいなあと思ったら、
2曲目が本格的なアフロビート・アレンジで、ノックアウトくらいました。
ドナートもオルガンやキーボードを駆使して、電子音ビヤビヤと鳴らしまくり。
もー、やりたい放題というか、アンタはブラジルのサン・ラーか。
フェンダー・ローズにモーグ、クラヴィネットなど、
ヴィンテージなキーボードの響きが、たまりませんなあ。
以降は、それほどアフロビートぽくなく、
ジェンベが活躍するアフロ・ラテンなんかもあったりして、うひひ。
ひさしぶりのエレクトリック・ドナートは、
メロウ・グルーヴなジャズ・ファンク・アルバムなのでありました。
João Donato "DONATO ELÉTRICO" SESC CDSS0073/16 (2016)