これ、これ。これですよ。
やっぱりバルカン・ポップは、こういう生音を活かしたフォークロアなサウンドでなくっちゃあ。
ここのところ聴いたセルビアのターボ・フォークは、
どれもこれもEDM寄りのサウンドになっていて、ウンザリさせられていたので、
ブルガリアのポップ・フォークまたの名をチャルガのトップ・シンガー、
エミリアの3年ぶりの新作に、快哉を叫んだのでありました。
冒頭から、アコーディオンとクラリネットの高速フレーズで、びゅんびゅんとトばす、トばす。
スタッカートの利いた、つっかかるようなツー・ビートを軸として、
くるくると変化するリズム・アレンジの巧みさに酔わされます。
ロマ色豊かなバルカン音楽の旨みをたっぷり溶かし込んだサウンドがたまりません。
アコーディオン、クラリネット、ヴァイオリンがそれぞれ超絶技巧のソロを取るかと思えば、
一転、アンサンブルが一丸となって怒涛の如く疾走します。
バルカン・ブラスが高らかに鳴らされる曲もあって、
まさに「めくるめく」という形容がぴったりのサウンドが繰り広げられ、血流はもう上がりっぱなし。
いやぁ、これぞバルカン・ビートでっす!
そんなアンサンブルとともに、艶やかな歌声を聞かせるエミリアの歌いぶりもまた見事。
こまやかなコブシ回しを使いながら、高速曲からスローまで、
クセのない美声を聞かせてくれます。
これまでのエミリアのアルバムの中でも、もっともフォークロア寄りに仕上がりました。
近年のポップ・フォーク、チャルガのプロダクションは、
凡庸なダンス・ポップに化していく傾向が強いんですけれど、
こういうバルカン・ルーツ色濃いサウンドをデフォルトにしてもらいたいと思うのは、
国外リスナーのわがままでしょうか。
Emilia "EH, BYLGARIJO KRASIVA" Payner Music PNR2015061618-1088 (2015)