「ミュージック・マガジン」2021年ワールド・ミュージック・ベストで8位選出の作品。
昨年5月号で松山晋也さんが紹介されていたのを完全に見逃していて、
遅まきながら聴いてみたんですが、ブッとびました。こりゃあ、すんげえ。
去年のうちに聴いていたら、間違いなくマイ・ベスト・アルバムに入れてたわ、コレ。
オクシタニア男女6人のグループで、グループ名は、彼らが暮らす村の名前。
フランス中央高地コレーズ県チュール近くの村とのことで、
ふた組の兄妹とその幼なじみによって結成されたグループといいます。
この6人が、村に伝わるオック語の伝承歌を、
肉声と打楽器のみで歌い演奏するんですが、これがハンパない。
6人の肉声が交叉するようにエネルギーを放出して、
躍動感たっぷり、トランシーなグルーヴの渦を巻き起こします。
これほど生命感溢れるコーラス・ワークは、めったに聞けるもんじゃありません。
狂騒ともいうべきパワフルな声楽なんですが、野趣溢れるというのとは違い、
冷静に耳を傾けてみれば、洗練されたアレンジによって、
曲を立体的に組み立てているのがわかります。
松山さんの記事によると、当初は民謡をパンク風にやったり、
ブラスを混ぜたりしていたそうなんですが、数年前にサン・サルヴァドールに改名して、
声と打楽器のみのアンサンブルにしたそう。
なるほど、そういう試行錯誤を経ているから、素材は伝統的であっても、
ビートやコーラス・ワークを現代的に響かせることができるんだなあ。
リーダーのガブリエル・デュリフのお父さんは、
地元の伝統音楽を採集してきた音楽学者だそうで、
親子二代の取り組みの成果でもあるんですね。
「伝統音楽の真髄を捉えた欧州現代人の表現の好例」との松山さんの指摘はしかりで、
伝統とモダンの理想的な融合を聴くことのできる見事な作品です。
San Salvador "LA GRANDE FOLIE" Pagans MDC026 (2020)