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ディアスポラのサハラウィ アシサ・ブラヒム

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Aziza Brahim  ABBAR EL HAMADA.jpg

西サハラのシンガー・ソングライター、アシサ・ブラヒムの新作。
地味なアルバムなんですけれど、聴けば聴くほどに引き込まれるんですよ、これが。
特に歌がうまいわけでもないのに、すうっと心に入り込んでくる歌声で、
何回か聴くうち、すっかり手放せなくなってしまいました。

デビュー作のしわがれ声に比べると、落ち着きのある和らいだ声に変わって、
歌いぶりも、以前より穏やかになったのを感じます。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-07-30
多くの歌が寂寥感に溢れ、淡々と歌っていることで、
かえって乾いた哀しみの情感が、強く伝わってきます。

全曲アシサの自作で、ライナーの歌詞を読んであらためて認識させられるのは、
彼女がディアスポラだという厳然たる事実です。
ラヴ・ソングなんて、1曲もありません。
アルバムすべてが、望郷の歌で埋め尽くされているんですね。

サウンドの方も、デビュー作にあった無理に接ぎ木したような部分がなくなり、
よくブレンドされた汎西アフリカ的サウンドに進化しました。
ベンベヤ・ジャズが活躍していた頃の70年代ギネア音楽を思わせる曲想など、グッときますよ。

今回ラティーナ編集部からメール・インタヴューの機会をいただき、
以前の記事に書いた疑問も氷解しました(←それが何かは、『ラティーナ』を読んでね)。
あわせて、前作のオルター・ポップ盤、新作のライス盤ともに、
「アジザ」というカナ読みをしているのが、ナットクいかなかったんですけれど、
それが間違いということもわかって、やっとスッキリ。

Aziza Brahim なんて、明らかにアラブ系ではない西洋風の名前なんだから、
z の発音は、スペイン語読みで s になるはず。
ぼくがこれまで「アシサ」と書いていたのは、間違いでなかったわけです。
というわけで、関係者のみなさま、訂正をよろしくお願いします。

インタビューのなかで印象的だったのは、影響を受けた歌手というぼくの質問に、
アフリカ音楽では誰々、アラブ音楽では誰々と答えていて、
アラブ音楽としてモーリタニアのディミ・ミント・アッバを挙げていたこと。
たしかに、ムーア人はアラビア語を話し、モーリタニアはアラブ世界に属すので、
ディミ・ミント・アッバをアラブの歌手と言ってもおかしくはないんですが、
ちょっと意表を突かれた思いがしました。

ということは、アシサは自分自身を、アラブ音楽の歌手と考えているのかなあ、
それともアフリカ音楽の歌手と考えているのかしらん。
メール・インタヴューでなければ、
サハラウィのアイデンティティについて、ぜひ訊いてみたかったところです。

Aziza Brahim "ABBAR EL HAMADA" Glitterbeat GBCD031 (2015)

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