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ウクレレの可能性 RIO

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ウクレレの可能性って、まだまだあるんだなあ。
そんなことを痛感させられた、2000年代生まれの俊英の登場です。
00年代にジェイク・シマブクロの登場で、
<おもちゃ>のようなウクレレが、これほどカッコいい楽器だったのかという!
という驚きが世間で沸きあがりましたけれど、
RIOはさらに新たなウクレレの可能性を拡げる革命児ですよ。

今年ハタチというRIO、日本生まれの日本人ですけれど、
小学生の時にハワイに暮らしてウクレレと出会って弾き始め、
中学生になって日本に帰国した後も、海外に呼ばれて演奏するいう早熟な天才です。
ぼくがRIOに感じ入ったのは、彼の音楽性で、
いわゆるバカテクといった超絶技巧ではありません。

ウクレレの名手といえば、古くはロイ・スメック、
そして近年のジェイク・シマブクロに至るまで、
トリッキーなプレイなど、曲芸のような派手なパフォーマンスに目を奪われがち。
でも、RIOくんのウクレレの才能は、そこじゃないんだな。
高度なテクニックを持ちながらも、それが前面には出ず、
まず先に音色の美しさに耳を引き付けられるんですよ。
ウクレレの才能は、クラシック・ギター同様、
利き手のタッチに如実に表われることを、このアルバムを聴くと、強く実感します。

超絶技巧の持ち主にありがちな、バリバリと硬い音色になることなく、
甘いトーンを保っていることが、驚異的。
速弾きでこの柔らかなトーンを維持するタッチは、天才の証しです。
キレのあるカッティングも、ウクレレという楽器の特性が最大限に生かされていて、
カヴァキーニョやギターとの違いが、くっきり表われていますね。

本作はオリジナル曲のほか、
‘My Favorite Songs’ ‘This Nearly Was Mine’ のスタンダード・ナンバーに、
ルイス・ゴンザーガの‘Asa Branca’ と
エルメート・パスコアールの‘O Povo’ をメドレーにしています。
17歳の時、イタリアのウクレレ・フェスティヴァルに参加したさいに、
ブラジルのミュージシャンから教えてもらったというんだから、
2000年代生まれらしいインターナショナルな交流ぶりですねえ。
そんなキャリアの積み重ねによって、
ハワイ音楽を起点としながら、ジャズ、ファンク、ブラジル音楽など
多様な音楽を消化してきた軌跡がにじみ出ています。

プロデュースは、クラックラックスでも活躍する、ジャズ・ギタリストの井上銘。
RIOが15歳でデビュー作を出した当時から、井上銘は憧れの人だったとのこと。
井上とソロを応酬する場面でも、RIOは臆せずに渡り合っていて、
なおかつ、アンサンブルのなかで前に出たり、引いたりのバランスが絶妙で、
20歳とは思えぬ成熟したプレイに舌を巻きます。

ウクレレの可能性を拡げるタッチの天才、RIOの今後が楽しみです。

RIO 「RIO」 Twin Music TMCJ1002 (2021)

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