関東が6月に梅雨明けするやいなや、
いきなり最高気温が36度を超したのには、参りました。
20年来のウォーキング習慣で、夏負けしない身体づくりをしているとはいえ、
昼休みにランチへ行き来するだけで、
アスファルトの輻射熱と熱波で、頭がクラクラしてきます。ここ、ドバイかよ!
ほんと、外で現場仕事する方々には、リスペクトしかありません。
冷房の利いたビルの中で事務仕事してるのが、申し訳なく思っちゃいます。
今年はいつもの夏の定盤ではなく、
久しく聴いていなかったハワイ音楽で、涼を取りたくなりました。
とびっきりピュアなのが聴きたくなって、棚から取り出したのがマヒ・ビーマー。
ハワイ音楽にモダン化の兆しが現れた60年前後、ルネサンスの気運が高まって、
キャピトル・レコードから出た、奇跡のような2枚のレコードです。
商業主義に押し流されやすかったハワイ音楽が、
伝統的な音楽性をこれほど純度高く結実させた作品は、ほかに見当たりません。
「奇跡」と呼んだのは、このレコードを本土の大資本キャピトルが出したことです。
59年に出た1枚目『ハワイのマヒ・ビーマー』が、
ハワイ音楽の歴史的傑作であることに、異を唱える人はいないでしょう。
最初に聴いた時は、びっくりしたなあ。
どう聴いても、女声としか思えない、とてつもなく美しいファルセットが飛び出して、
え? え?とジャケットを何度も見返して、中身違いかと思ったもんねえ。
ファルセットがハワイ音楽の特徴であることを知ったのも、このレコードからで、
古代ハワイで王に仕えた楽士のハク・メレが、
祭祀であげる祝詞オリで裏声を使うところから来ていることを学びました。
『ハワイのマヒ・ビーマー』のオープニングでチャントが登場しますけれど、
これは歓迎のチャント。短くサワリを披露するだけとはいえ、
冒頭にこうした演出をするところからして、伝統への敬意がしっかりと伝わってきます。
そしてなにより、マヒのファルセットの美しさといったら、もう神がかり。
語尾のヴィブラートに至るまで、絶妙なコントロールに魅せられます。
名盤中の名盤の59年作に続いて出た、62年の第2作は、
マヒの祖母ヘレン・デシャ・ビーマーのソングブック集(1曲のみ伝承曲)。
1作目でも、さきほどのチャントやフラの大有名曲‘Kimo Hula’ など、
ヘレンの曲を多く取り上げていたほか、
ヘレンの初の商業録音となったチャールズ・E・キングの有名曲‘Ke Kali Nei Au ’
(俗に「ハワイアン・ウェディング・ソングで知られる)も歌っていました。
ヘレン・デシャ・ビーマーは、ハワイ音楽史に残る伝説的な人物だったのです。
ビーマー家というのは、カメハメハ1世の血を引く名門音楽一家で、
マヒは先ほど触れたとおり、ヘレンの孫にあたるんですね。
そうした名家一門のマヒが、ハワイ音楽の歴史的傑作を残したのは、
必然であったように思えます。
Mahi Beamer "HAWAII’S MAHI BEAMER" Hula T1282 (1959)
Mahi Beamer "MORE AUTHENTIC ISLAND SONGS" Hula T1698 (1962)