新作と勘違いして、デビュー作の改訂版に飛びついて失敗した
カーボ・ヴェルデのシンガー、ルシベラの2作目。
今度こそ本物、6月3日に出たばかりの新作であります。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-10-13
今回もモルナ、コラデイラを真正面から捉えたカーボ・ヴェルデ歌謡集で、
奇をてらわない誠実な作りに、この人の歌と向き合う姿勢がよく伝わってきます。
上手く歌おうなんて自意識がみじんもみられない、淡々とした歌いぶりがいいんです。
やるせない悲しみや苦悩、困難を克服しようとする勇気、生きる喜びや感謝など、
日常生活のさまざまな場面で去来する生活感情が、
ルシベラの声を借りて、無理なくこちらの胸にすうっと入り込んできます。
けっして上手い歌ではないのに、心に染み渡るような歌を歌える人です。
今作は、カーボ・ヴェルデ女性にオマージュを捧げた作品だとのこと。
そうしたテーマに沿った12曲が選ばれ、エリダ・アルメイダの2曲のほか、
ルシベラもモルナとコラデイラを1曲ずつ自作しています。
意外な選曲は、キューバ人作曲家の
ゴンサロ・エミリオ・モレット・ロペスによるボレーロ。
エミリオ・モレットは、現在のセプテート・アバネーロの歌手の一人ですけれど、
どういう経緯でこの曲がレパートリーになったんでしょう。
この曲だけはスペイン語で歌っています。
ルシベラの和らいだ声を、弦楽器を中心にしたソフトなサウンドに包んだ
プロダクションは、デビュー作と同じくマルチ奏者トイ・ヴィエイラのお仕事。
トイはピアノ、ギター、カヴァキーニョ、ウクレレを弾いています。
かつてセザリア・エヴォーラの音楽監督だったカーボ・ヴェルデの名ギタリスト、
バウもギターを弾いています。
エッジの立った響きがまったく現れないマイルドなサウンドが、
クレオールのまろやかな音感を引き立てる、美しいアルバムです。
Lucibela "AMDJER" Lusafrica 862522 (2022)