思いがけずフィジカルで聴くことのできた、アデクンレ・ゴールドの新作。
ナイジェリアのアフロビーツは、デジタル・リリースがデフォルトになってしまって、
CDリリースが皆無になってしまった感のあるここ数年ですけれど、
アメリカのブートレグ・レーベルから出るとは、なるほどそのテがあったか。
で、4年ぶりのCDでのご対面。
デビュー作とセカンドでは、「アーバン・ハイライフ」と自称していたとおり、
アフロビーツの定型から離れたポジションで、
独自の個性を発揮していたアデクンレでしたけれど、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-09-15
今作からはトーキング・ドラムやヨルバ語が消え、
インターナショナル・マーケットを意識して英語で歌い、
アフロビーツど真ん中のサウンドになっています。
最近はアフロ・フュージョンと呼ばれたりもしているアフロビーツですけれど、
もはやコンテンポラリーなR&Bと、ほぼ見分けがつきません。
アンビエントR&Bのサウンドの質感と、寸分変わらないサウンド・クオリティで、
現在ヘヴィロテ中のエラ・メイと続けても、しっくり聞けるくらいだから、
そのサウンドは、完全に世界標準でありますね。
そんなアフロビーツのテンプレートにみずから落とし込んだ今作、
トレンドに合わせただけじゃん、という悪口を言うのも十分可能なんですが、
ソングライティングの才はバツグンで、やっぱ非凡だわ、この人。
凡百のアフロビーツ作から、アタマひとつもふたつも抜けたアルバムが
作れる人であることを証明しています。
でも、ねえ。
デビュー作とセカンドで示してみせたように、アフロビーツという意匠を借りずに、
世界を我が元へ引き寄せる才能があるのにもかかわらず、
それをわざわざ捨てて、世界に身を寄せていくなんて、クールじゃないよなあ。
ビヨンセやドレイクといった大物に、フックアップされたいとでも思ってる?
ウィズキッドをロール・モデルにするようなケチな連中とは、
アデクンレは違うという気概を、次作では見せてもらいたいなあ。
Adekunle Gold "CATCH ME IF YOU CAN" Mix Unit no number (2022)