音楽に込められた、作者の意思の熱量がスゴイ。
演奏が伝えようとするメッセージの内容を、まったく知らずに聴いているだけなので、
きわめてあいまいな感想にすぎませんが、ストーリー性のある楽曲が並んでいて、
聴き応えがスゴイ。圧のある作品ですよ。
南ロンドン出身のマルチ奏者でコンポーザー兼プロデューサーのデビュー作。
制作に4年かけたというのもナットクの緻密さで、ストリング・アレンジを含めて、
1曲ごと作曲・アレンジの段階で考え抜かれているのを感じます。
その一方、演奏には自由度があり、プレイヤーもフレキシブルに演奏しています。
精緻な設計と現場での工事監理が、理想的に行われているような作品じゃないですか。
各曲のタイトルから察するに、
UKブラックとしてのアイデンティティを問うた作品のようですね。
曲の始まりは静かでも、リズム・セクションがドラマティックに展開していく曲が多く、
エネルギーをほとばしらせているんですよ。
曲の入口こそスムーズなサウンドなのに、
中盤からドラムスが大暴れし始めて手に汗握っていると、
終盤にさあーっと熱が引いていく曲もあれば、
終盤にかけて、シンフォニックなクライマックスへ展開していく曲もあり。
孤独感と内省を沈殿させた楽曲には、光と影のそれぞれの側面が備わっていて、
それが深い物語性を演出しているんですね。
メロウなウーリッツァーの響き、J・ディラの影響あらかたな細分化されたビート、
シルキーなサックスの音色など、新世代UKジャズの魅力が、
優れたマテリアルにのせて発揮されている作品です。
DoomCannon "RENAISSANCE" Brownswood Recordings BWOOD0275CD (2022)