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イノヴェイティヴなフィンガースタイル・ギター ヤスミン・ウィリアムズ

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Yasmin Williams  URBAN DRIFTWOOD.jpg

ひさしぶりにスラック・キー・ギターのアルバムを
いろいろ聴いていたのが呼び水になったのか、
ステキなアクースティック・ギターのアルバムと出会えました。

サリー・アン・モーガンのインタヴュー記事で、
最近聴いているアルバムとして挙げられていた、
アクースティック・ギタリスト、ヤスミン・ウィリアムズの20年作です。
18年にデビューした新進のフィンガースタイル・ギタリストで、これが2作目。
サリーがジャケットのレイアウトとデザインをしていて、親交があるようですね。

カントリー・ブルースをベースにゴシックな表現をするジョン・フェイヒーや、
ジャズやクラシックを越境するラルフ・タウナーといったタイプではなく、
マイケル・ヘッジスのようなニュー・エイジ系ギタリストといっていいのかな。
ブルース、フォーク、ジャズ、いかなる伝統にも縛られない音楽ですね。
このタイプのアクースティック・ギタリストで、アルバム一枚聴き通せる作品に、
あまり出会えた試しがないんですけれど、これは満足しました。
スラック・キー・ギター・ファンにもオススメできますよ。

こういうギター音楽って、どうしても超絶技巧だとか、独創的な奏法が売りになって、
ギターのための音楽になってしまうところが、手段の目的化そのもの。
ギターは音楽の道具であって、その逆じゃないですからねえ。

ヤスミンは、膝の上にギターを置いてタップして弾くのと、
アップライトに持ち替えて通常のフォームで弾くのをシームレスに切り替え、
曲のパートによって奏法を使い分けています。
さらに、ギターのボディにカリンバを貼り付け、
右手でカリンバ、左手で指盤をタップしながら演奏もしているんですね。

YouTube で観ると、どうしてもその演奏法ばかりに目が釘付けになり、
肝心の音楽が右から左へ抜けていってしまいます。
曲弾きのように思われるのは、ヤスミンにとっても本意ではないはずなので、
ライヴを観るより、音だけを楽しむ方が正解でしょうね。

じっさい、ぼくが本作に惹かれたのも、
この音楽が作曲優先で制作されているのが、きちんと伝わってくるからです。
ギターの奏法優先で作られた曲とは、アンビエンスがぜんぜん違いますもん。
歌を感じさせるメロディが落とし込まれたコンポジションを、
イマジネイティヴなパフォーマンスによって、幽玄なサウンドをクリエイトしたり、
優美で繊細な表情を見せたり、パーカッシヴな生々しいエネルギーを噴出したりと、
さまざまなテクスチャで表現しています。

チェロとジェンベがゲストで参加する2曲を聴くと、
このイマジネイティヴな才能は、ソロ演奏にとどまらず、
さらにアンサンブルで豊かな才能を開花させていきそうで、これからも期待できますね。

Yasmin Williams "URBAN DRIFTWOOD" Spinster SIS0006 (2020)

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