UKのアフロ・ポップ・ユニット、オニパのヴォーカリストK.O.Gのソロ・デビュー作。
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プロダクションがバツグンによく出来ていて、
いかにもUKらしい、スマートなアフリカン・ポップに仕上がっています。
プロデュースは、オニパでギターとエレクトロニクスを担当していたトム・エクセル。
トム・エクセルは、ヌビアン・ツイストやエゴ・エラ・メイの
プロデューサーとしても知られていますね。
そういえば、K.O.Gは、ヌビアン・ツイストの19年作“JUNGLE RUN” で
2曲(‘Basa Basa’ ‘They Talk’)客演していたんだっけ。
“JUNGLE RUN” は、UK産アフロ・ジャズとしても出色の仕上がりでした。
ここでは取り上げそこねちゃいましたけど、ミクスチャー・センスがバツグンで、
アフリカ音楽になじみのないファンにもアピールする、
スタイリッシュなダンス・ポップの快作となっていましたね。
トニー・アレンやムラトゥ・アスタトゥケといったレジェンド・クラスのゲストも、
それぞれの魅力が映える楽曲にフィーチャリングしていて、
トム・エクセルのプロデュース力に恐れ入ったものです。
ジャケットのアートワークからして、
オニパのデビュー作のいんちきエスニックとは、ケタ違いのセンスで、
これぞアフリカ新時代をイメージするヴィジュアルじゃないですか。
あらためてチェックしたら、あのいんちきエスニック画、
トム・エクセルが描いたものだったのか。デザインの才はないけれど、
プロデュースの手腕が確かなのは、今作でも証明されています。
‘Shidaa’ はアフロビート+ヒップ・ホップ、
ジャマイカ人ダンスホールMCのフランツ・フォンをフィーチャーした
‘Lord Knows’ は、ジャジー・ヒップ・ホップ・テイストのアフロ・ジャズでスタートし、
中盤にブレイクを挟み、妖しいメロディのグナーワへと変わるユニークなトラック。
ジェドゥ=ブレイ・アンボリーが参加した‘.No Way’ はスークース。
アクースティック・ギターと小物打楽器で歌われる
アフリカン・フォーキーな‘Adakatia’ は、
♪ Highlife music ♪~ とコーラスが連呼するけど、ハイライフとは似ても似つかぬ曲。
つまりトム・エクセルがデザインするのは、
無国籍なアフリカン・ミュージックなんですね。
アフリカン・ポップスのさまざまな要素を抽出して、ジャズやファンク、
ヒップ・ホップ、ダンスホール、ダブとミクスチャーすることにネライがあるので、
アフリカ通を喜ばすような本格的な方向に行くことはありません。
‘Adakatia’ のアクースティック・ギターだって、パームワインかと思いきや、
4分の4拍子のスクエアなリズムだし、ギターのリックにもメロディにも、
パームワインを連想させる要素はないしね。
フランスのトロピカル・ダンス・ポップのレーベルから出ているとおり、
メロウネスに富んだサウンド・プロデュースは、まさしくUKソウル・マナー。
ハチロクで前のめりに突進していく‘Gbelemo’ など、
4分の4拍子にスロー・ダウンするブリッジを挟んだ曲構成が、実にクール。
ラストのファンキー・ハイライフの‘Yaa Yaa’ まで、シャレオツに仕上げたアルバムです。
K.O.G "ZONE G, AGEGE" Heavenly Sweetness/Pura Vida Sounds PVS018CD (2022)
Nubiyan Twist "JUNGLE RUN" Strut PVS018CD (2019)