う~ん、いいジャケットですねえ。
70年代南アで人気を博したインストゥルメンタル・ソウル・バンド、
ザ・ムーヴァーズのコンピレーションです。
以前、オルガン・ソウル・インスト・バンドのブラック・ディスコの記事を書きましたが、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-07-09
ザ・ムーヴァーズこそ「南アのブッカー・T&ジ・MGズ」と呼ぶにふさわしいバンド。
腕利きのミュージシャンがスタジオに集まったといった風情のジャケットは、
いつまでも眺めていられる写真ですね。
アナログ・アフリカにとっては、初の南アものになりますけれど、
最近はいろいろなレーベルが南ア音楽の遺産を掘り起こすようになりましたね。
南アにはまだ山ほどお宝が眠っているので、歓迎すべきことではあるんですけれど、
個人的な関心からするとビミョーに掘削ポイントがずれていて、
う~ん、ソコじゃないんだけどなあ、というボヤキもあるんですけれども。
ザ・ムーヴァーズも、南ア色の薄い北米ソウルのコピー・バンドなので、
ぼくが即飛びつくタイプの音楽じゃありませんが、
初期の録音をまとめたアナログ・アフリカは、さすが掘り所がわかっていますね。
以前サウンドウェイがストレート・リイシューした79年作の“KANSAS CITY” なんて、
メンバーがすっかり入れ替わった後期のアルバムで、中身は単なるディスコ。
こんなもんリイシューする価値なんて、ありません。
デビュー作をリリースした70年から76年までのシングル曲をコンパイルした本作、
サミー・ベン・レジェブによるライナー・ノーツの解説がなにより貴重で、
これまでまったく情報のなかったバンドの来歴を知ることができました。
インスト・バンドながら、本作には歌入りの曲も5曲収録されていて、
ガロのベスト盤CDにも収録されていた‘Soweto Inn’ は、
76年のソウェト暴動の日、レコーディングしていたスタジオの二階の窓から、
黒煙があがるソウェトを目の当たりにして、急遽タイトルを付けたことを知りました。
この‘Soweto Inn’ や‘Kudala Sithandana’ などの歌ものは、
ンバクァンガを思わせる南アらしさがありますね。
女性歌手が歌う‘Ku-Ku-Chi’ なんて、レッタ・ンブールに匹敵する魅力あり。
ライナー・ノーツに書かれていて知りましたが、
歌入りの曲でザ・ムーヴァーズの初ヒットとなった70年の‘Hopeless Love’ は
まだ14歳だったブロンディ・マケネが歌ったものだったそうです。
この曲やデビュー作のタイトルともなった‘Crying Guitar’ については、
解説でも言及されているのに、なんで収録しなかったんでしょうね。
収録時間39分44秒というのは、いかにも物足りず、上の2曲や
マラービ調のメロディが嬉しい‘Bump Jive’ あたりは選曲してほしかったなあ。
ちなみにこの3曲はガロのベスト盤CDに収録されていて、
アナログ・アフリカ盤とのダブリは3曲のみとなっています。
The Movers "THE MOVERS 1970-1976" Analog Africa AACD095
The Movers "GREAT SOUTH AFRICAN PERFORMERS" Gallo CDPS104