おお、ひと皮むけたかな。
新世代コンテンポラリー・ジャズのテナー・サックス奏者トニー・マッカスリンの新作。
前作“CASTING FOR GRAVITY” もカッコよかったんだけど、
爆発しそうでなかなか爆発しないもどかしさが、なんとも歯がゆく、
整合感ありすぎな演奏ぶりに、イマドキの若手ジャズはこれだからなあと、
タメ息のひとつも漏らしてたんでした。
「センスの良さ」なんてもん、かなぐり捨てて、もっとバァーッといけよ、バァーッと。
あれから3年。新作のメンツも同じなので、変わり映えないかと思ったら、
今度はちょいと様子が違う。パワー・アップしたんではないかい?
ビート・ミュージックを取り入れたマーク・ジュリアナのドラミングが大活躍していて、
いやー、カッコいいとはまさにこのこと。
マークのバスドラにピタリと合わせて、
ティム・ルフェーヴルがベース・ラインを弾くところなど、失禁ものですよ。
リズムの鬼みたいな演奏になるところが、個人的には好みなので、
きっちりと構成されたコンポーズの、端正に仕上げた曲は、どうもまだるっこしい。
そんなにわかりやすくしなくっても、いいんだけどなあ。
ま、そんなところが、やっぱ完全満足とはいかない人ではありますけれど、
マーク・ジュリアナの絶好調ぶりに引っ張られて、
トニー自身のテナーもアグレッシヴにブロウする局面もみられるし、
鍵盤担当のジェイソン・リンドナーも、前作より出張る場面が増えています。
もっともっと出しゃばってくれても、いいんだけどね。
Donny McCaslin "FAST FUTURE" Greenleaf GRECD1041 (2015)