ナイジェリアで5月2日に発売された、フェミ・オルン・ソーラーの新作。
前々作14年の“GRACE” を入手した後、いつまでも記事を書かずにいたら、
評価していないのかと誤解されてしまったので、今回はすぐに書いております。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2014-12-17
それにしても“GRACE” の反響は、正直意外でした。
ミュージック・マガジンの2015年間ベストにも選ばれ、
タワーレコードの店頭にも並んだんですからねえ。
タワーレコードで、紙パック仕様のあの簡易なナイジェリア盤CDが売られたのって、
初めてのことだったんじゃないかな。
15年の“MY TIME” に続いてリリースされた本作、長尺と短尺半々の4曲を収録し、
“GRACE” でも発揮されていたサウンドのアイディアが豊かなジュジュを味わえます。
フェミのジュジュの良さは、なんといってもパーカッション・アンサンブルがしっかりしていて、
メリハリが利きまくっているところですね。
バンドの写真をみると、トーキング・ドラムだけで8人もいるんだから、
サウンドに厚みが出るわけだよなあ。
使われているトーキング・ドラムを眺めてみると、肩にかける鼓型のドゥンドゥン系と、
座って膝の上に立てて叩く平面太鼓のサカラの両方を組み合わせているところが、要注目。
一般にジュジュで使用されるトーキング・ドラムはドゥンドゥン系のみで、
フジで使われるサカラのトーキング・ドラムが使われることはありませんでした。
これによって、バウンシーなリズムがより強調され、
要所要所に差し挟まれる、雪崩を打つような緻密なリズム・ブレイクが、
キマリまくるってわけです。
こうしたハード・ドライヴするリズム・セクションの存在が、
フェミが範としたインカ・アイェフェレとの決定的な違い。
平板なリズムとグルーヴ感皆無のインカ・アイェフェレのゴスペル・ジュジュを長年、
だからアフリカのゴスペルはダメなんだよと、ずっと思っていましたけど、
ダメなのはゴスペルではなくて、インカ・アイェフェレなんですね。
3曲目冒頭の賛美歌ふうコーラスも、ちっとも気にならなかったもんなあ。
ジュサを称するフェミのジュジュ・サウンドは、洗練された軽快なスタイルが持ち味。
サニー・アデを思わす、軽くトースティングするようなフェミのヴォーカルと、
きれいめな男女混声コーラスは、ジュジュがシティ・ポップ化したかのよう。
シンセが代用したホーン・セクションのソリから始まる4曲目では、
R&Bのセンスで料理したヨルバ・ハイライフふうに始まり、
途中からジュジュらしいメロディに移っていくという、
キリスト教系ヨルバ音楽の過去と現代を繋ぐ試みに、ゾクゾクしてしまいました。
Femi Oorun Solar and His Sunshine Jasa Band "MERCY BEYOND" FS7 Music/Omoola Bold Music Promotion no number (2016)