3年前の前作“AOR” のリリースに合わせて来日した
エジ・モッタのライヴは、楽しかったなあ。
アルバムのハイライトにもなっていた、
デヴィッド・T・ウォーカーをスペシャル・ゲストに招いたステージだったんですけれど、
エジ本人にとっても、この来日公演が
デヴィッド・T・ウォーカーとの初顔合わせだったとのこと。
デヴィッド・Tの参加は、データをやりとりしたオーヴァー・ダブ作業だったので、
じっさい一緒にスタジオに入ったわけではなく、来日公演で共演がかなったんですね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-06-03
クラブでライヴを観る時のマイ・ルールで、この時も最終日最終ステージ、
13年10月19日のセカンド・ステージを観たんですが、
予想外だったのは、エジのエンタテイナーぶり。
日本のシティ・ポップにも精通する、ド外れたレコード・コレクターのエジゆえ、
ステージで山下達郎の「Windy Lady」を歌い出したのには、らしいなあとは思ったものの、
ローズのエレピ弾き語りで披露したワン・マン・バンドのパフォーマンスには、ビックリ。
ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」が飛び出すわ、
シェリル・リンの「ガット・トゥ・ビー・リアル」が飛び出すわ、
アース・ウィンド&ファイアの「レッツ・グルーヴ」が飛び出すわで、
もう延々と止まらないもんだから、場内は拍手喝采。
エジ自身がホントに楽しそうで、ユーモアたっぷりに身振り手振りを交えながら、
ベースのスラップやドラムスのフィルインを、ヴォイス・パーカッションで披露。
さらにヴォコーダーやミュート・トランペット、ワウペダルなど、
70~80年代のクロス・オーヴァー・サウンドに耳なじんだ者にはたまらない、
ヴィンテージ・サウンドを繰り広げるヒューマン・ビート・ボックスぶりに圧倒されました。
もっともそこで面白かったのが、エジのパフォーマンスが
ビート・ボックスほど洗練されたものではなく、いなたい芸風だったところ。
スキャットなんかも、なんだかエディ・ジェファーソンみたいで、ジャズ芸人といった風情。
バークリー卒業者のおゲージツ・ジャズが主流の現在、
こういうエンタメ・センスに溢れたジャズをやる人は貴重ですね。
2部構成となった新作は、
そんなエジの「大衆音楽としてのジャズ」を発揮した快作となりました。
前半の「ソウル・ゲイト」の5曲こそ、前作“AOR” の延長線上の内容となっていますが、
後半の「ジャズ・ゲイト」では、来日公演時のライヴ・パフォーマンスの一端が現れています。
パトリース・ラッシェンやヒューバート・ロウズのキャスティングは、
レア・グルーヴ世代好みといえますが、
個人的には、マーヴィン “スミッティ” スミスの起用が嬉しかったな。
このほか今作で印象的なのは、エジが熱唱する場面が多く、
ライヴでも発揮されていた、エジのヴォーカリストとしての魅力を打ち出していること。
耳ざわりのいい西海岸フュージョン・サウンドなどと侮れない、
稀代のジャズ・エンタテイナーの逸品です。
Ed Motta "PERPETUAL GATEWAYS" LAB 344 83368973 (2016)
Ed Motta "AOR" LAB 344 LAB10153-2 (2013)