アクースティック・ギター一本でラップし、歌を歌うというのは、
ごまかしのきかない、いわば丸裸ともいえるスタイル。
ギターMCとでも呼べばいいのか、
ローホーを名乗る若者のPV「浮き草」を偶然観て、イッパツで魅了されました。
バツグンに滑舌が良くって、ディクションも明快。
日本語をリズムにのせるフロウが鮮やかで、
日本人でこんなに肉感のあるビートを吐き出すラッパーを聴いたのは、ぼくは初めて。
もっともラップには疎いので、ぼくが知らないだけの話だとは思いますが、
そんな門外漢のオヤジ・リスナーをCDショップに向かわせたんだから、
このPVの説得力、ただごとじゃありませんよ。
そんでもって、ギターの腕前がこれまたスゴい。
ギターをばんばん叩くスラム奏法を駆使して、スピード感溢れるビートを繰り出します。
う~ん、ヒップホップで育った世代のギター弾き語りって、カッコイイねえ。
だってねえ、おじさん世代のギター弾き語りって、ダサかったんだよ。
アルペジオでしみったれた歌を歌うフォークや、
ギターをただストロークするだけの、技のないフォーク・ロックがデカい顔してたんだから。
あの頃のギター好きとしては、ブルースかジャズに向かうしかなかったので、
イマドキの若者の音楽性が、まぶしくみえますよ。
ブルースを体得した渋みのある曲を歌う一方、
サーフ・ロックを思わせる、からりとした曲も歌ってみせる。
ジャイヴやホーカムをホウフツとさせるユーモアもあって、
ギター1本でひょうひょうとジャンルを越境する豊かな音楽性が、この人の強みですね。
ホームレスになったことも1度や2度ではないという、
どん底生活を経験をしたことも、リリックに深みを与えています。
「One Day」の傷ついた人に寄り添う温かさに、
痛みを知る者の器の大きさがさりげなく示されているし、
原発問題をテーマにした「Genpatsu Boogie」にも、
自分の足元に引き寄せて語る誠実さに、反原発ソングに鼻白むぼくも共感できました。
本人もリリックで語っているとおり、不幸自慢ではなく、
みずからの境遇を笑い飛ばす人なつこさが、この人の最大の魅力。
関西人ならではのユーモアとペーソスは、
ぼくの世代的には有山淳司や憂歌団に通じるものがあって、
親近感が持てますねえ。
もしストリートの投げ銭ライヴで観たら、
その場を離れられなくなることウケアイの、強力な磁力を持った逸材です。
ローホー 「GARAGE POPS」 Pヴァイン PCD22394 (2016)