ずいぶん昔の記事のタイトルで、その名を絶叫したことがあるアンガーム。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2009-08-27
絶叫するほど、一時期ホレこんでいた人で、
90年代以降のアラブ歌謡歌手ではこの人が最高峰だったと、今も信じて疑いません。
アンガームの最高傑作、03年作の“OMRY MAAK”
邦題『あなたと生きる』のライナーノーツを書いたという縁もあって、
自分にとっては忘れ得ぬ人なのであります。
しかし、このアルバム以降、アンガームは作品に恵まれず低迷し、
以前記事に書いた09年の“NEFSY AHEBBAK” で復調の兆しをみせたものの、
エレクトロに挑戦するという暴挙に出た10年作で大コケし、
さすがのぼくも擁護できませんでした。
あの大駄作から5年。シャバービーそのものの低迷もあって、
アンガームの名をすっかり忘れていた今日この頃だったわけですが、
この復帰作には、相好を崩してしまいました。
帰ってきましたよ、あの繊細なこぶし回しが。
アンガームの良さといえば、なんといっても若い頃に鍛えあげた古典声楽の技法。
ヴィブラートとメリスマを使い分けつつ、
繊細な歌いぶりを見事にコントロールする歌唱力の高さは、
全アラブ世界のシャバービー・シンガーを見渡しても、アンガームがトップでしょう。
そんなテクニックが鼻につかずに、さらりと聞かせてしまうところがアンガームの良さ。
本作も、そんなアンガームの上品でフェミニンな魅力が発揮されています。
プロダクションもゴージャスで、アラブらしいストリングスもたっぷりとフィーチャーし、
久しぶりの前線復帰を守り立てています。
ヒット性を狙った曲がなく、地味めな曲が並んだのも個人的には好ましく、
「おかえり、アンガーム」と、満面の笑みで迎えたいアルバムです。
Angham "AHLAM BARYA" Rotana CDROT1929 (2015)