真夏の季節にうってつけのパーカッション・ミュージックが届きました。
マルチニークのベレでありまっす。
ここ最近は、フレンチ・カリブのパーカッション・ミュージックというと、
グアドループのグウォ・カをよく耳にしていましたけれど、
マルチニークのベレのアルバムが出るのは、ひさしぶりな気がします。
奴隷時代に起源をもつパーカッション・ミュージックで、
現代もなおナマナマしさを失わないのは、レユニオンのマロヤと双璧でしょう。
この2枚組、歌い手と打楽器奏者総勢20名近くを集めた、企画アルバムなんですね。
歌い手がかわるがわるリードを取り、コーラスとコール・アンド・レスポンスするんですが、
老若男女さまざまな歌い手たちが、いずれもコクのあるノドを聞かせてくれて、
変化に富むばかりでなく、なんとも味わい深いんです。
伴奏は、樽型の太鼓ベレ(タンブーまたはジューバ)とチ・ブワ(2本のスティック)が基本。
数曲で、シャシャ(シェイカー)やコン・ランビ(ほら貝)も加わります。
ちなみに、チ・ブワのことを、架台に載せた竹だと勘違いしている人がいますけど、
竹はバンブー=フラペと呼ばれ、叩く方の短い棒の名前がチ・ブワなんですね。
チ・ブワはベレの基本のリズムを生み出し、
叩くのは必ずしも架台に載せた竹ばかりでなく、本作のジャケットでもおわかりのとおり、
横置きしたベレのボディを叩いたりします。
各曲には、ベレ、ベリヤ、カレンダ、ダミエ、グラン・ベレ、ベネズエル、クードメン、
ティング=バングなどの形式名が書き添えられていて、
リズムやダンスの型に、数多くのヴァリエーションがあることがよくわかります。
ダミエは格闘技、カレンダは戦いの音楽であるように、激しいダンスを伴うものが多く、
ワークソングのように短いフレーズの反復を延々と繰り返す内向きのダンスではなく、
外にエネルギーが向かう、跳躍を伴う瞬発力のあるダンスです。
CD2枚組全編、打楽器と唄とコーラスのみという、シンプル極まりないものですけれど、
パーカッション・ミュージック・ファンにはたまらない逸品。
ぎらぎらとした真夏の陽を浴びて、弾けるリズムの快感に酔いしれます。
V.A. "CONCEPT BÈLÈ : SANBLÉ" Konvwa Moun Bele 6971.2 (2016)