ティワ・サヴェイジのアルバムで、
ナイジェリアのポップスのクオリティの高さにノックアウトをくらい、
ナイジェリアはヒップホップよりR&B寄りのポップスの方が、
断然面白いことに気づかされたんですが、
今度はダレイという男性シンガーの最新作に、やられちゃいました。
本作が5作目になるという“NAKED” は、のっけの“Asiko Laiye” からゴッキゲン。
アフロビート使いのヒップホップR&Bに仕立てたこのトラックは、
キャッチーなツカミもバツグンの、グルーヴィなナンバー。
人気沸騰中のラッパー、オラミデをフィーチャーしたリミックス・ヴァージョンを、
8曲目にも収録しているくらいなので、ヒット狙いの勝負曲なんでしょうね。
続いて、ピジン・イングリッシュとヨルバ語で歌われる2曲目の“Orekelewa” は、
サウンドのテクスチャこそ、メジャー感いっぱいのポップスとなっているのにもかかわらず、
トーキング・ドラムがカクシ味に使われ、メロディにもヨルバ臭さがぷんぷん匂うという、
ティワ・サヴェイジで目を見開かされた、新機軸のヨルバ・ポップとなっているんです。
3曲目の“You're Beautiful” も王道のポップスといったメロディーで、
1番はきれいなクイーンズ・イングリッシュで歌われていると思いきや、
2番からピジンになり、最後はヨルバ語に変わって、
トーキング・ドラムとヨルバ流儀のコール・アンド・レスポンスによる
ブリッジを挟むというアレンジに、ヨルバ・ミュージック・ファンは、
頬をゆるまさずにおれません。
ヨルバ流アフロ・ポップから、ヒップホップR&B、
さらにインターナショナルに通用するポップ・ナンバーまで、
幅広な曲を書くことのできる才能は、感服するほかありませんね。
またシンガーとしても魅力溢れる人で、屈折のない、まっすぐな歌いぶりは、
フェイク使いのR&Bシンガーと異なる資質を感じさせ、
正統派のポップス・シンガーたる大物感を漂わせています。
ピアノ伴奏のみで歌う曲なんて、若い頃のビリー・ジョエルを思わすところもあって、
上質のアイドル・ポップといった感をいっそう強くしますね。
ストリングスやホーンをふんだんに使ったプロダクションもゴージャスなら、
時間と金をかけてしっかりと制作されたPVも見ごたえがあって、
圧倒されるほかありません。
ヨルバ・ミュージックの未来は、もはやジュジュやフジでないことだけは確実で、
ポップスの中にこそ、その伝統が生かされているのを強く感じます。
Darey "NAKED" Livespot no number (2015)