おそれいりました、フローラン・マッツォレーニ。
今度はベニンの老舗楽団ポリ=リトモの新作を手がけましたよ。
フローランが監修した、オート・ヴォルタの70年代録音3枚組CD写真集に
感服していたばかりだったんですけれど、リイシューだけでなく新作まで、
いまや西アフリカはフローランの独壇場ですね。
ベニンのT・P・オルケストル・ポリ=リトゥモといえば、
03年にドイツのPAMがリイシューしたのを皮切りに、
サミー・ベン・レジェブのアナログ・アフリカが執念ともいえるこだわりで、
限定リリースのファースト・アルバムを含む4作の単独復刻作をリリースしましたね。
ほかにも、ベニンやトーゴのアフロ・ファンクのコンピレーションにも、必ず選曲されていて、
そこまで復刻する価値があるのかなあと思っていたのも、正直なところ。
しかし、そんなヨーロッパでの再評価が現地にも飛び火したのか、
ベニンのトップ・ショウビズから10枚組というすさまじいリイシューが出て、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-12-04
その後同レーベルから、さらにヴォリューム・アップした17枚組が出たとのこと。
http://elsurrecords.com/2016/11/07/le-tout-puissant-orchestre-poly-rythmo-de-cotonou-madjafalao/
ここまでくると、さすがにフツーのアフリカン・ポップス・ファンには関係のない物件といえますが、
あらためてこれまでのリイシューを振り返ってみると、
このバンドの多様な音楽性をうまくダイジェストしたのは、サウンドウェイ盤の
“THE KINGS OF BENIN : URBAN GROOVE 1972-80” だったと思います。
ポリ=リトゥモは、アフロ・ファンクを軸としながら、
ヴォドゥン(ヴードゥー)のリズム、サトやサクパタを意識的に取り入れたバンドでしたけれど、
いわゆるヴードゥー・ファンクに徹していたわけではなく、ロックンロールもやったし、
パチャンガなどのラテンもやれば、ザイコ・ランガ=ランガのカヴァッシャもやり、
ボサ・アフロなんてゲテものまで、要するに流行りモノははなんでもやるバンドでした。
デビュー作なんて、まるっきりアフロビートでしたからね。
そんな雑食ファンクが真骨頂であり、悪く言えば無個性だったポリ=リトゥモですけれど、
82年に活動を停止して、長いブランクを経てカムバックした11年のストラット盤では、
ヴードゥー・ファンクに焦点をあて、B級と見下されがちなバンドに、
もう一度くっきりとしたアイデンティティを打ち立てようとする意図がうかがえました。
68年結成以来リーダーを務めていたアルト・サックス奏者のメロメ・クレマンが、
12年に67歳の若さで他界するという痛手を負ったものの、
カムバック第2作となる本作では、フローランのプロデュースのもと、
往年の録音以上にヴードゥー・ファンクに活路を見出した傑作に仕上がっています。
思えばガンベ・ブラス・バンドの新作も、ヴードゥーを全面に押し出して、
従来の洗練された音楽性からグッと野性味を増していました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-07-13
ベニンという国は、隣国のガーナやナイジェリアに比べて、
明確なアイデンティティを持ったポップスがないという弱みがありましたけれど、
お隣のトーゴともども、ヴードゥーをキーとして新たな進展が期待できそうです。
Le Tout-Puissant Orchestre Poly-Rythmo "MADJAFALAO" Because Music BEC5156646 (2016)
T.P. Orchestre Poly-Rythmo "THE KINGS OF BENIN : URBAN GROOVE 1972-80" Soundway SNDWCD004