南ア・ジャズのミュージシャンといえば、ケープタウンやジョハネスバーグの出身者が多いなかで、
ギタリストのセラエロ・セロタは変わり種。
65年1月3日、南ア北部リンポポ州の州都ポロクワネ近郊の
セクルウェ村に生まれたペディを出自とする人で、
幼い頃からペディの伝統的な音楽やダンスに触発されて育ったといいます。
高校卒業後、鉱山労働者として働き、その後ジョハネスバーグに移ってギターを覚え、
劇場の清掃員や案内係、ジャズ・クラブの用務員などの仕事をしながら、
ジャズ・ギターを見よう見まねで練習したという、苦労人であり努力家であります。
その後、奨学金を得てケープタウン大学へ入学し、本格的にジャズを学びながらプロ活動を始め、
98年に初のソロ・アルバムをリリースしました。
5作目にあたる本作は、セラエロのギターに、ピアノ、ベース、ドラムス、
女性コーラスという編成で、セラエロのルーツであるペディの音楽を聞かせます。
ペディの文化は、主流であるズールーやコサに比べて、
あまりに知られていないと感じているセラエロは、
ペディの文化を理解してもらうため、ペディの伝統を自作曲に取り入れ、歌っているといいます。
「マイ・ホーム」を意味するタイトルの本作は、すべてペディ語(北ソト語方言)で歌っていて、
幼い頃の村での生活や、結婚式で歌われる狩猟の歌など、
ペディの伝統音楽をモチーフとした自作曲で占められています。
ペディの音楽というと、オートハープ弾きの盲人ジョハネス・モーララがいるので、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-10-31
聴き比べてみましたけれど、リズムよりメロディに特徴があるように感じますね。
バラッド・タイプの起伏の乏しいメロディの曲が多く、
セラエロの歌い口にも、ストーリーテリング的な性格を感じます。
とはいえ、それがペディ音楽の独自性なのかどうかまではわかりませんが、
グルーヴィーなハチロクあり、3連を強調した4分の4拍子など、
ンバクァンガやマスカンダとは違うサウンドであることはわかります。
ペディ・ポップと呼ぶべき本作のサウンドは、南ア・ジャズではまったくありませんが、
セラエロのギターだけが、正統派のジャズ・ギターのフレージングになっているのが面白いんです。
タウンシップ・ポップにジャズ・ギターが紛れ込んだといった感じで、
フュージョン調にならないところが良さかな。セラエロのクセのないヴォーカルも爽やかです。
Selaelo Selota "LAPENG LAKA" Live At The Shack Entertainment/Sony Music CDSTEP129 (2009)