31歳の若さで亡くなったマリのカマレ・ンゴニ奏者ヴィユー・カンテは、
05年の死の直前に制作した初カセットが、
この夏スターンズによってCD化され話題となったばかりですけれど、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-08-24
実はその初カセットに先んじた録音があり、
すでに3年も前にリリースされていたことが判明しました。
01年にフランス人プロデューサーのヴァンサン・ドルレアンが録音した、
ヴィユーのカマレ・ンゴニのソロ・パフォーマンスがそれで、
13年にヴァンサン自身が立ち上げたレーベルの第1弾としてリリースされていたんですね。
バンドキャンプで偶然に発見した時は、えぇ、こんなのがあったの !? と驚いちゃいましたよ。
スターンズ盤では、このCDについて何も触れておらず、
スターンズ盤のCD制作にあたったバンニング・エアがライナーで、
「ゆいいつの商業録音」と書いていたのは、不可解としか言いようがありません。
ヴィユーのマネージャーとの間で正式に契約してCD化したのだから、
3年前の本作を知らないはずがなく、なんで無視したんでしょうね。
アルバム・タイトルの“SANS COMMENTAIRE” は、
ヴァンサンがレーベルにもその名を付けているほどで、強い思い入れを感じさせますが、
このタイトルの曲は本作に収録されておらず、スターンズ盤の1曲目に収録されているところも、
なんだかいわくありげというか、
ヴァンサン・ドルレアンとバンニング・エアの間になんかあったんですかね。
まぁ、そのへんの事情はわからないんですが、リスナーにはどうでもいいい話なので、
肝心の中身の話をしましょう。
スターンズ盤では、リズム・セクションにパーカッションを加えたアンサンブルの中で、
ヴィユーが改造した12弦カマレ・ンゴニのプレイが聞けましたが、
こちらは、ヴィユー一人によるソロ演奏となっています。
多重録音によって、カマレ・ンゴニを存分に弾き倒した圧巻のプレイが楽しめますよ。
スターンズ盤ではグリオのシンガーをゲストに呼んでいましたが、
こちらではヴィユー自身がすべて歌っていて、粗削りながら魅力あるヴォーカルを聞かせています。
マシンガンのようなトレモロや、クイーカのような効果音を出したりと、
トリイキーなプレイにハッとさせられる場面は多いんですが、
それらがハッタリぽく聞こえないのは、ジャズから学んだと思われるフレージングの組み立てや、
ハーモニクス奏法の効果的な使い方など、
伝統的な奏法と織り交ぜたバランスの良さを感じさせるからで、
ヴィユーの音楽性に伝統と革新が両立していることが、くっきりと示されています。
スタジオで録音したのではなさそうで、虫の音が聞こえてくるなど、
バマコの暗い闇夜が目に浮かぶようで、想像力をかきたてられます。
あぁ、行ってみたいなあ、バマコ。
アンサンブルとソロという編成の違いもあり、優劣つけがたい2作といえますね。
スターンズ盤を気に入った人ならば必聴の、カマレ・ンゴニの暴れん坊が残した傑作ソロ演奏です。
Vieux Kante "SANS COMMENTAIRE" Sans Commentaire SC01