今回ヴェトナムから届いたCDで一番嬉しかったのが、ビック・トゥエンの13年作。
いやあ、ようやく手に入りました。長かったなあ。
どういうわけだか、現地に買付けを何度お願いしても見つからなかったもので、
もう入手できないかと思ってたんですけど、ようやっと、であります。うれしー♡
79年ヴェトナム南部カントー生まれ、ホーチミン育ちの
ビック・トゥエンという女性歌手を知ったのは、世紀をまたいでからでしたね。
デビューまもない02年作の“HOA TÍM LỤC BÌNH” で、初めてその歌声を聴きました。
アメリカ盤だったので、越境歌手とばかり思い込んでいたんですが、
ライセンスでヴェトナム原盤をアメリカでリリースしたものだったんですね。
だいぶあとになって、ヴェトナム現地で活躍する歌手だということを知りました。
越境歌手と疑わなかったのは、伝統歌謡のサウンド・プロダクションが垢抜けていたからで、
ヴェトナム現地のサウンドづくりも、ずいぶん向上したなあと、感心させられたんだっけ。
ニュ・クイン、タム・ドアン、フィ・ニュンなど、当時愛聴していた越境歌手のCDと、
まったく遜色のないプロダクションで、ヴェトナム現地シーンに注目するようになったのは、
思えばビック・トゥエンの本作がきっかけでしたね。
十代の頃から民謡歌手としてキャリアを積んできたビック・トゥエンは、
クセのない柔らかな歌声を聞かせ、これといった強い個性は感じさせないものの、
こぶしやヴィブラートを過不足なく使い、確かな歌唱力を披露しています。
07年作の“CHIỀW CUỐI TUẦN” では、さらに繊細な節回しを聞かせるようになり、
歌唱に磨きがかかりました。全編スローのレパートリーで占めたアルバムを、
飽きさせることなく、ラストまでしっかり聞かせる説得力がありますね。
02年作・07年作ともにぼくが手に入れたのはアメリカ盤でしたけれど、
今回ようやく入手した13年作はヴェトナム盤。
ヴェトナムのサイトで全曲聴いていたので、内容の素晴らしさはとっくに承知済。
ビック・トゥエンのさらりと丁寧な歌いぶりを支えるデリケイトなプロダクション、
ヴェトナム伝統歌謡のひとつの理想形がしっかりと出来上がっていて、
安心して、その世界に身をゆだねることができますよ。
一方で、アラビックなメロディを取り入れたアレンジをするなど、
コンテンポラリー・サウンドに新たな試みも加えていて、
歌手・制作スタッフともども、上り調子の絶好調を感じさせます。
マレイシア伝統歌謡最高の女性歌手シティ・ヌールハリザが、
スリア・レコードで次々と快作を連発していた、
ゼロ年代前半のイキオイと共通するものを感じさせますね。
Bich Tuyền "THƯƠNG VỀ MIỀN ÐẤT LẠNH" Saigon Vafaco no number (2013)
Bich Tuyền "HOA TÍM LỤC BÌNH" Thể Giới Nghệ Thuật no number (2002)
Bich Tuyền "CHIỀW CUỐI TUẦN" Vi-Vi Productions no number (2007)