オウサム・テープス・フロム・アフリカの新作は、
マリのフルベ人女性歌手による、ぴかぴかの新緑。
オウサム・テープスは、アフリカのローカルで流通している
カセットを発掘する再発専門レーベルでしたけれど、
最近はこうした新緑もリリースするようになったみたいですね。
アーティストとじかにライセンス契約したリリースは、
おととしのバラフォン奏者SK・カクラバのアルバム・リリースに続くものです。
フルベのグリオ歌手と聞いては、触手を伸ばさないわけにはいきませんよ。
マリばかりでなく、セネガルからカメルーンまで西アフリカの広い地域に暮らす
遊牧民フルベの音楽は、アフリカ音楽聴き始めの頃から、ぼくの大好物。
そのことはこのブログを始めた早々の記事で、打ち明けた覚えがあります。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2009-06-20
その記事では、ソンガイの歌手であるアフェル・ボクームが
フルベの歌も歌っていたことで、話題にしたんですけれど、
そのアフェル・ボクムが本作の1曲目にゲストで参加しています。
その曲は、フルベのグリオ歌手として名高いインナ・ババ・クリバリの曲。
解説によれば、アワ・プロはインナ・ババ・クリバリの娘だといいます。
アルバム・ラストも母インナの曲で、1曲伝統曲があるほかは、すべてアワの曲です。
ンゴニ、ソク、エレクトリック・ギター、カラバシ、タマ、フルートに
女性コーラスを伴奏に歌うフルベ音楽らしいペンタトニックのメロディが、
滋味な味わいに富んでいて、とても和みます。
同じマリでも、マンデの華やかな音楽とはまったく別種の味わいで、
むしろソンガイの音楽と親和がありますね。
あと、フルベらしさを象徴するのが、フルートです。
便宜上フルートと称されることが多いんですけれど、
もちろん西洋楽器のフルートではなく、木製の笛です。
奏者が息を吹き込む音の混じり合う、ノイジーな音色が特徴的で、
フルベ音楽に限らず、最近はマンデ・ポップや、
セネガルその他西アフリカの音楽で広くフィーチャーされる機会が増えたので、
聞き覚えのある人も多いはずです。
インターナショナルなマーケットにめったに登場しない、フルベ音楽の貴重な一作です。
Awa Poulo "POULO WARALI" Awesome Tapes From Africa ATFA024 (2017)