昨年末にリリースされたレー・クエンの新作が届きました!
好みの分かれる歌手ゆえ、あぁ、またか、と思われる方もいらっしゃるでしょうが、
レー・クエンがお好きでない方は、どうぞ読み飛ばしてください。
はい。それでは、あらためまして、レー・クエン・ファンの皆様。
今回の新作は、ヴェトナムで「ボレーロ」と称されている戦前のロマンティック歌謡シリーズ
“KHÚC TÌNH XƯA” で、15年リリースの第3集に続くアルバムとなっています。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-05-22
ただし、今回は「第4集」という記載はなく、
副題にあるとおり、ラム・フォンという作曲家のソングブックとなっています。
これまで、特定の作曲家を取り上げたソングブック・アルバムでは、
ヴー・タイン・アンのアルバムがありましたけれど、
今回はそれに続く第2弾ということになりますかね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-02-03
ラム・フォンは、
39年、ヴェトナム南部タイランド湾に面した港湾都市ラックザーの生まれ。
15歳の時から作曲を始め、未発表曲を含め200曲以上の作品を残した人だそうです。
60年代にヒット曲を次々と生み出す人気作曲家となり、
戦前のサイゴンのテレビや劇場で、ラム・フォンの曲が盛んに流れたとのこと。
南ヴェトナムでもっとも成功した作曲家と言われ、巨額の富を築いたそうですが、
サイゴン陥落後、すべての財産を残したままアメリカへ脱出し、
転落人生を送るという悲劇に襲われます。アメリカでは各地を転々としながら、
音楽とは無縁の下働きで食いつなぎ、辛酸を舐める人生だったそうです。
現在もアメリカで暮らしていて、レー・クエンが今回のアルバムを制作するにあたり、
アメリカ・ツアーの際に本人を訪ねたところ、
レーのことをテレビで観て知っていたとのこと。
まさか自分を知っているとは想像していなかったレーは、いたく感激したそうです。
オープニングの曲が穏やかな曲調で、
悲恋を情感込めて歌うこれまでのアルバムの雰囲気とちょっと違っていて、
おや、という気にさせられます。
続くタンゴ風のボレーロも、どこか軽やかさがあって、
これまでの濃い歌い口とはひと味違って、さっぱりとした風情があります。
ラム・フォンの作風を生かしてか、ドラマティックなアレンジを避けて、
メロディを引き立てる工夫をしているようです。
レーの歌いぶりも、歌世界にのめりこまない<引いた>歌いぶりで、
しつこさを感じさせません。
ラストのラテン歌謡にアレンジした風通しの良さも聴きものです。
これまでレーは、13年作の“DÒNG THỜI GIAN” で、ラム・フォンの
“Một Mình” を歌ったことがあり、今作にも同曲が収録されているんですが、
今回はがらりとアレンジを変えているんですね。
13年作ではピアノのイントロで始まり、ドラマティックなアレンジをしていたのに、
今回はギターとヴァイオリンのみのシンプルな伴奏で、
細やかな情感を漂わせながら丁寧に歌っています。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2014-02-18
CDのパッケージは、今回もホルダーケース仕様の豪華版で、
美麗フォトカードと裏表になった歌詞カード12枚入り。
ジャケットを含め、すべて中部の古都フエで撮られていて、
阮朝王宮はじめティエン・ムー寺やカイ・ディン帝廟など、
以前ぼくも訪れたフエの名所がロケーションされていて、懐かしい思いで眺めました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-12-13
いまや「ボレーロ・クイーン」と形容されるまでになった
レー・クエンの絶好調、とどまることを知りません。
Lệ Quyên "KHÚC TÌNH XƯA : LỆ QUYÊN - LAM PHƯƠNG" Viettan Studio no number (2016)