すげえぞ、ジュピテール司令官。
キンシャサのゲットーで辛酸を舐めた苦労人の底力は、やっぱハンパないわ。
前作“HOTEL UNOVERS” も圧巻だったけれど、
今作の掛け値なしのエネルギーには、圧倒されるほかありませんね。
伝統リズムを土台としながら、これほど痛快なアフロ・ロックに仕上げてしまう
ジュピテールのサウンド・クリエイターの才は、群を抜いています。
ルンバやフォルクロールのサウンドの定型をいっさいなぞらず、
というより、完全に背を向けて、コンゴで誰もやったことのない
オリジナルのサウンドを獲得したところに、ジュピテールのスゴさがあります。
全アフリカを見渡したって、伝統をもとにしながら、
ワン・アンド・オンリーのオリジナル・サウンドをクリエイトした人といったら、
アリ・ハッサン・クバーンくらいしか思い当たりませんよ。
ヨーロッパのプロデューサーが手を貸してはいても、
サウンドのアイディアは、すべてジュピテールが生み出していて、
プロダクションもきちんと彼が掌握していることがわかります。
ジュピテールの頭の中には、自分の望むサウンドが、きちんと描けてますね。
ついこの前、モコンバの新作について不安視してたみたいなことを書きましたけれど、
ジュピテールについては、ぜんぜん心配してませんでした。
デーモン・アルバーンの使い方だって、完全にコントロールできているじゃないですか。
デーモンの声かけで集められたプロデューサー・チーム、DRCミュージックによる
キンシャサ・セッションの“KINSHASA ONE TWO” には反発を覚えたものですけれど、
あんなふうにテクノでいじられるようなマネは、ここでは起きっこありません。
ジュピテールの睨みがちゃんと利いてますからね。
14年に来日した時、ジュピテールは自身の音楽を、
「ボフェニア・ロック」と呼んでいましたけれど、
アフリカン・ポップスになじみのない若いロック・ファンにこそ、届けたいですねえ。
若いミュージック・ラヴァーが、ストリート魂溢れ出るサウンドに熱狂して、
モッシュやダイヴが起こるのを目撃してみたいもんです。
バスキアのペインティングを想起させる、
3D(ロバート・デル・ナジャ)のアートワークもサイコーですよ。
Jupiter & Okwess "KIN SONIC" Zamora ZAMED88623 (2017)