クレズマー・リヴァイヴァルの立役者フランク・ロンドンが来日し、
日本のちんどん・クレズマー楽団、ジンタらムータと共演するという絶好の企画。
ゲストには、ベツニ・ナンモ・クレズマーの時代から、現在のこまっちゃクレズマまで、
日本のクレズマー草分けとして音楽活動をしてきた
梅津和時と巻上公一の二人が顔を揃えるほか、チューバの関島岳郎、
トロンボーンの中尾勘二も参加するという最強の布陣で、役者、揃いすぎ。
これは見逃すわけにはいかないでしょう。
週末金曜日の5月12日、ちゃっちゃと仕事を片づけ、
会社を定時に出て、行ってきましたよ、秋葉原CLUB GOODMAN。
フランク・ロンドンといえば、忘れられないのがクレズマティックスのデビュー作。
あれは、衝撃的でした。
まだクレズマーを聴き始めて間もなく、ヴィンテージ録音を勉強中だったところに、
いきなり飛び出したクレズマティックスのラディカルなサウンドは、
単なるリヴァイヴァルを超えた強度がありました。
クレズマティックスでの活動ばかりでなく、さまざまなユニットやプロジェクトでの
旺盛な演奏活動によるジャンル横断と越境の旅こそが、
クレズマーの復興にどとまらない、フランク・ロンドンの活動の真骨頂でした。
今回の<クレズマー・ミーツ・ジンタ>も、そのひとつに数えられますね。
いやー、痛快な2時間半でした。
1部こそ、伝統的なクレズマー曲を中心に、
オーソドックスなクレズマーを演奏していましたけれど、
2部にゲストを迎えてからが、ハジけたねえ。
クレズマーばかりでなく、スウィング・ジャズあり、エチオピアあり、美空ひばりあり。
「悲しき口笛」「お祭りマンボ」までは、そんなに意外でもなかったけど、
フランクが発見した日本のクレズマー曲という前振りに始まった「魔法使いサリー」は、
新発見でありました。なるほど、確かにコーラスのところなんて、ユダヤ民謡ぽいかも。
レパートリーも楽しかったけれど、
そこで繰り広げられる一人ひとりのパフォーマンスが、スゴかったですよ。
フランクのトランペットの出音の大きさといったら。
梅津さんのアルトの音といい勝負で、やっぱ一流のプレイヤーは、みんな出音がデカイ。
フランクはメンバーにどんどん指示を出してソロを回したり、
一方、メンバーはソロで自由に遊んでみせていました。
リードだけで吹いてみたり、おもちゃの楽器を鳴らしたり、
ヴォイス・パフォーマンスをしたりと、役者揃いのメンバーが引き出しを、
まあ、開けること、開けること。
最後は大団円で、感無量といった大熊ワタルのMCが、その夜を象徴していました。
Frank London "A NIGHT IN THE OLD MARKETPLACE" Soundbrush SR1010 (2007)
Frank London's Klezmer Brass Allstars "DI SHIKERE KAPELYE" Piranha CDPIR1467 (2000)