トータスのギタリスト、ジェフ・パーカーが来日中。
5月中にトータスとスコット・アメンドラ・バンドのステージ含む
14公演が予定されているようなんですが、
残念ながら、自身のグループでの公演はないもよう。
ジェフ・パーカーを、ポスト・ロックのギタリストではなく、
シカゴAACMのジャズ・ギタリストとして認識してきた自分にとっては、
ちょっと残念なんですけど、渋谷のタワーレコードでミニ・ライヴをやるというので、
喜び勇んで観に行きました。
なんせ昨年出たジェフ・パーカーのソロ・アルバムは、
シカゴ音響派の面目躍如たる、痛快な仕上がりとなっていましたからねえ。
浮遊感のあるギターとサックスが、フリーキーにプレイすると
緩くひしゃげたサウンドスケープが、オーガニックな清涼感を醸し出し、
ネオ・ソウルにも通じるレイドバックなムードを溢れ出すところは、なんとも魅力的でした。
J・ディラの影響あらかたな、ヨレたビートを打ち出す
ジャマイア・ウィリアムスのドラミングは、新時代のジャズを映しているし、
同時にゆるいファンク風味やネオ・ソウルな趣味も感じさせ、
白昼夢を見るかのような、ラウンジーなオルガンの響きや、
ヒップホップを経由したロウなビート・ミュージックの質感をあわせ持っていたりと、
多様な音楽が複雑に交差する妖しさと心地よさが、ないまぜとなっていました。
ミニ・ライヴ前の公開インタヴューで、
ジャズ評論家の柳樂光隆さんから「影響を受けたミュージシャンは」と訊ねられると、
レニー・トリスターノ、ジョー・パス、グラント・グリーン、デレク・ベイリー、
高柳昌行なんて名前が出てきて、それぞれになるほどと、うなずくものがありました。
ノイズ・ミュージックをやっていたソロ・アルバムもあったもんなあ。
でも、今作はまったく趣向が違っていて、
J・ディラやQ=ティップなどのヒップホップからの影響を表出した、
テン年代らしいジャズとなったわけですね。
ジェフのようなマイナーなアーティストのソロ作が日本盤で出るのも驚きですけど、
それが話題となって、インストア・ライヴに若者が長蛇の列をなすんだから、
時代は変わったよねえ。
ほんとに今、ジャズが来てるんだなあという実感を強くしました。
ワールド系のライヴだと、ぼくと同年代の中高年ばっかで、若人の影が薄いんですが、
音楽を真剣に求める若者の熱気に、なんか感無量になっちゃいましたよ。
若者が夢中になってこそ、ポピュラー音楽。
中高年マニアの愛玩物だけになるようじゃ、ダメだよね。
Jeff Parker "THE NEW BREED" Inernational Anthem Recording Co. IARC0009 (2016)