トラッド方面は、できるだけ歌の素の味を愉しみたいというキモチが強いので、
トラッド・ロックは苦手です。クラブ・マナーなエレクトロ仕立てとか、
プログレ方面にサウンドが向かうのも、御免こうむりたいですね。
ドラムスが入ると、ヤボったくなると思ってるもんで、
よほどセンスのよい使い方をしていない限り、満足できないんですよ。
昔から、フェアポート・コンベンションすらダメという、
狭い器量の持ち主なもんで、すんません。
で、エストニアのこの3人組。
ロック・バンドと変わらないドラム・セット、かき鳴らし系アクースティック・ギター、
残る女性がバグパイプ、口琴、ソプラノ・サックス、ホイッスルを持ち替えて演奏するという
変則トリオで、そっからして、自分向きじゃないなと思ってたんですが、
意外や意外、面白かったです。
エレクトリックな意匠がないところも個人的嗜好に合いましたけど、
半世紀ほど昔のエストニア女性が歌ったアーカイヴ音源をサンプリングして、
曲を組み立てるというアイディアが面白い。
それらの音源は、エストニアの伝統的な歌い手によるもので、
メンバーのギタリストのお婆さんの録音も使われています。
1曲目のお婆さんが唱えるバター作りの呪文が面白くって、
この曲のヴィデオがYoutubeにもあがっていますけど、とってもユニークな仕上がりです。
ほかにも、治癒のための歌など、
メロディのない呪文めいた語りのサンプル音源を練り込んでは、
ユニークなサウンドづくりをしていて、聴きものです。
北欧的なダークさがなく、解放感のあるダンス・ミュージックが中心で、
リズムが多彩なところにも興味をひかれました。
Trad.Attack! "AH!" Nordic Notes NN068 (2015)