うわぁ、ごぶさたしてました~、お元気でしたかあと、
思わずジャケットに声をかけてしまった、
サンパウロのヴェテラン・バンドリン奏者、イザイアスの新作です。
前作がいつだったか、もう十年以上も前のことで記憶になくて、
ブラジルのディスコグラフィ
Dicionário Cravo Albin da Música Popular Brasileira
をチェックしてみたんですけど、なぜだか載ってないんですよね。
たしか、黒バックにショーロの楽器を並べた
ジャケットだったという記憶があるんだけどなあ。
エレピだったか、シンセだったか、もう忘れましたけれど、
鍵盤楽器の起用がいただけなくて、
ソッコー処分してしまったもんだから、タイトルを覚えてないんですよ。
もうひとつのディスコグラフィ Clique Music の方をのぞいてみたら、
ありました、ありました。
99年に出た“QUEM NÃO CHORA NÃO AMA” というアルバムですね。
やっぱりねえ、イザイアスの最高作はデビュー作の“PÉ NA CADEIRA” ですよ。
ちょうどぼくがショーロに夢中になっていた頃に手に入れたLPなので、
ことのほか思いも深く、ジャコー・ド・バンドリンのように、
「バンドリンを泣かせる」正統派らしいプレイにゾッコンとなったんですよね。
それなのに、上の二つのディスコグラフィとも、
イザイアスのデビュー作を正しく載せていないのは、遺憾千万。
81年にサンパウロのマイナー・レーベル、JVから出たレコードなのに、
99年にクアルッピがCD再発した時のアルバムとして載っているんですよね。
ぼくはこのデビュー作でイザイアスに夢中になっただけに、この扱いは悲しいなあ。
また、このデビュー作のジャケットがいいんですよ。
シャッターが半分下がったお店の中で、
ショーロを演奏しているレジオナルのメンバーたちの様子がちょっとのぞいているという、
なんとも雰囲気のある構図でした。
99年にクアルッピがCD化した時は、裏ジャケットの写真が表紙になってしまい、
このジャケットの写真がバック・インレイになってしまったのは残念だったなあ。
本名イザイアス・ブエノ・ジ・アルメイダ。37年6月7日生まれということで、
もう80歳になったんですね。そのプレイに衰えはみじんも感じられません。
曲の雰囲気に合わせて弾き方を変え、
思い入れたっぷりに、たっぷりとタメて間を長くとるかと思えば、
一方で、前のめりになって性急なフレージングを弾く曲あり、
律儀に音符どおり、きっちりと弾き、
プリング・オフやトレモロを駆使して、キリッとした響きを聞かせる曲あり、
曲の解釈にイザイアスのショーロ演奏家としての才能を感じます。
特に、スローでの泣かせ方、フレージングに合わせた音の強弱のつけ方、
スラーを効果的に加えたり、最後の音を印象的に美しく響かせるテクニックに、
これぞイザイアスだと感じさせる場面が多数あって、嬉しくなってしまいました。
昔気質のショーロ職人といったプレイに味わいをおぼえる、珠玉の一枚です。
Izaías e Seus Chorões "CHORANDO NA GAROA" Pôr Do Som PDS068 (2017)
[LP] Isaias e Seus Chorões "PÉ NA CADEIRA" JV JV003 (1981)
Isaias e Seus Chorões "PÉ NA CADEIRA" Kuarup KCD122 (1981)