ブラジルのアンダーグラウンド・シーンから登場したクリオーロ。
大ヒットとなったインディ制作の2作目は、
イギリスや日本でもリリースされ、話題を呼びました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-09-28
アフロビートあり、サンバあり、レゲエあり、ダブありと、
豊富な音楽性に裏打ちされたサウンド・クリエイターぶりが鮮やかで、
クリオーロのルーディなラップや歌より、魅力的なバックトラックに耳を惹かれました。
さて、そのクリオーロの新作は、サンバ・アルバムだというので、
かつてのマルセロ・デー・ドイスみたいなヒップホップとのミクスチャーを想像していたら、
これがヒップホップ色皆無の、伝統サンバ集だったのは、意外でしたねえ。
まず、一聴して驚かされたのが、クリオーロの声がぜんぜん違うこと。
ヒップホップをやってる時は、もっとダークな印象が強くて
歌だって、あんまりうまい人という印象がなかったので、別人かと思ったほど。
甘い歌い口で歌うかと思えば、朗々と歌劇ふうに演出した歌いぶりを聞かせたり、
子供たちのコーラスにのせて、キレのいいサンバを歌うなど、とにかく表情が明るい。
ヒップホップのルーディなキャラと、どっちがこの人の本質なんだろか。
ま、とにかく、それくらい、これまでのアルバムとは違うんですが、
ひさしぶりに聴くサンバで、これほどフレッシュなアルバムもなかなかありませんよ。
クリオーロの突き抜けた歌いっぷりも、すがすがしいですけれど、
パーカッシヴに弾けるリズムもピチピチとしていて、爽快そのもの。
北東部セアラー州生まれ、サンパウロ郊外のファヴェーラ育ちのクリオーロは、
初めて夢中になった音楽がヒップホップで、11歳で初めて曲を書き、
14歳でラッパーとなったといいますが、こんなにサンバを本格的に歌えるというのは、
やはりブラジル人のなせる業なんでしょうね。
両親が好きだったマルチーニョ・ダ・ヴィラ、
モレイラ・ダ・シルヴァ、ルイス・ゴンザーガを、
幼い頃から日常的に聴いていたからなのか、
サンバの歌い回しやリズム感がしっかりと身についていて、
こういっちゃあなんだけど、ヒップホップよりサンバの方が、何倍も輝いて聞こえますよ。
Criolo "ESPIRAL DE ILUSÃO" Oloko OLK015 (2017)