ジョアン・マカコーンの新作で、
オルランド・シルヴァやジョルジ・ヴェイガが愛唱したサンバを聴いていたところに、
どういう風の吹き回しか、その二人に加え、カルメン・コスタや
ジャクソン・ド・パンデイロ、ブラック=アウトといった往時の人気歌手たちが歌う、
50年代半ばのカルナヴァル(カーニヴァル)集が届きました。
ブラジルでは、LP初期の時代から、毎年カーニヴァルの季節になると、
各レコード会社が競ってサンバ・アルバムを出していましたけれど、
今回届いたのは、コパカバーナ社が出した55年と56年の10インチ盤2枚のリイシューCD。
これに加えて、57年にトゥルマ・ダ・ガフィエイラを名乗る楽団が演奏する、
アルタミーロ・カリーリョ曲集の10インチ盤も一緒に復刻されています。
ぼくは、55年と57年の10インチ盤2枚を持っていますが、
56年の10インチ盤は持っていなかったので、今回初めて聴きます。
こうした企画アルバムが復刻されることは、めったにないことで、
なんでこんな昔のカーニヴァル集がCD化されたのか、謎なんですけど、
CD化したのはブラジルではなく、なんとポルトガルのCNM。
オフィス・サンビーニャの配給で日本に入ってきたCDで、
10年にポルトガルで出ていたんですね。知りませんでした。
どういう経緯で復刻されたのかわかりませんが、
曲目と歌手名、作詞・作曲者のクレジットがあるだけで、
解説の1文もなく、表紙はペラ紙1枚というそっけなさ。
せっかくの貴重な音源なのに、これヒドくない?
半世紀以上も昔のカーニヴァル集を、こんなテキトーな作りで復刻して、
果たして売り物になるんでしょうかね。
まあ、それはさておき、今のカーニヴァルと比べると、
ずいぶん素朴に聞こえるかもしれませんけれど、
まだ大資本の匂いのしない大衆味に溢れていて、
ほっこりとした温もりが伝わってきますよね。
ポコポコしたパーカッションの響きに、50年代のムードが溢れます。
ジャクソン・ド・パンデイロのポップさには韜晦味もあって、
北東部人ならではのセンスを発揮しているんじゃないでしょうか。
そして、カーニヴァル集のあとに収録されたトゥルマ・ダ・ガフィエイラが、貴重なんです。
クレジットがないので、書いておきますけど、エジソン・マシャード(ドラムス)、
シヴーカ(アコーディオン)、アルタミーロ・カリーリョ(フルート)、
ラウル・ジ・ソウザ(トロンボーン)、マウリリオ・サントス(トランペット)、
シポー、ぜー・ボデガ(サックス)、ゼキーニャ・マリーニョ(ピアノ)、
ルイス・マリーニョ(ベース)、ネストール・カンポス(ギター)という面々なんですよ。
当時最高の名手たちが勢揃いしているのもナットクのカッコよさで、
さすがこの面々のプレイだと、今聴いても、古さを感じさせませんよねえ。
トゥルマ・ダ・ガフィエイラにはもう1枚12インチLP(“SAMBA EM HI-FI”)があって、
そちらでは、バーデン・パウエルがギターを弾いているんです。
できれば、カーニヴァル集の方とは別に、
トゥルマ・ダ・ガフィエイラの2枚をCD化して欲しかったなあ。
それで、カーニヴァル集の方は、55・56・57年の3枚でCD化してくれれば最高でしたね。
とまあ、ファンはいろいろ勝手なことを言うものですけれど、
50年代のカーニヴァル集を聞いたことのない人なら、マストな逸品であります。
Black-Out, Jorge Veiga, Orlando Silva, Carmen Costa, Jackson Do Pandeiro, Angela Maria, Turma Da Gafieira and others
"GENUÍNO CARNAVAL BRASILEIRO" CNM CNM239CD
[10インチ] Black-Out, Jorge Veiga, Orlando Silva, Carmen Costa, Jackson Do Pandeiro, Gilberto Alves
"CARNAVAL COPACABANA DE 1955" Copacabana CLP2004 (1955)
[10インチ] Emilhinha Borba, Jorge Goulart, Vera Lucia, Ruy Rey, Vagalumes Do Luar, Duo Guaruja, Nora Ney and others
"CARNAVAL 57" Continental LPP47 (1957)