このンバラ・シンガー、ただもんじゃない。
冒頭の1曲目にヤられました。
オープニングは、キャッチーなヒット性の高い曲を置くのが定石。
ところがこのアルバム、いきなり子供のア・カペラで始まり、
ハラムに導かれてアブドゥ・ギテが歌い始めるという、異色のナンバー。
コーラスも子供たちが歌っていて、伝統色の濃い曲と思いきや、
途中でアブドゥ・ギテがフランス語で語りを入れます。
なんらか明快なメッセージを持つ曲なんでしょう。
こういう曲を冒頭に置くところに、気骨を感じさせるじゃないですか。
そして、2曲目からは一転、
サバールとタマが炸裂するストレイトなンバラが炸裂します。
アブドゥ・ギテ・セックは、味のある歌い回しを持つシンガーで、
ユッスーと節回しがそっくり。ユッスーばりのハイ・トーンは炸裂しないけれど、
知らずに聞いたら、ユッスーと思う人がいるんじゃないかな。
そして、バンドの演奏力もすごく高いんですよ。
リズム・セクションがタイトに引き締まっていて、
ドラムスとパーカッションの絡みなど、小気味いい場面を随所に作っているし、
ギターも要所で光るプレイを聞かせます。
気になって、ジャケット裏のクレジットを見たら、
なんと、ジミー・ンバイじゃないですか!
ご存じ、ユッスーのシュペール・エトワールの名ギタリストですよ。
6曲目では、途中からサルサ・タッチのピアノがフィーチャーされるなど、
アレンジも気が利いています。
アレンジはアブドゥ・ギテとドラムスのウスマンヌ・カに二人が担当しています。
アブドゥ・ギテ・セック、あらためて経歴を調べてみると、
79年6月18日、サン=ルイのグリオの家系に生まれた人。
96年にサン=ルイでフランス白人のドラマーと、ンバラとロックをミックスしたバンド、
ウォック(ウォロフとロックの合成語)を結成して活動したのち、
02年にソロ・デビューしたといいます。
そういえば、この人のCD第1作の04年作を持ってたけど、手放しちゃったな。
デビュー・カセットから数えて今作で8作目。
十分なキャリアを積んだ人ならではの、ンバラ会心作です。
Abdou Guité Seck "NDIOUKEUL" AGS Music no number (2017)