ブラジルの若手アコーディオン奏者の新作。
お店のコメントに、
「これまでのアコーディオン・ショーロの概念を打ち破る意欲作」とあるので、
期待して買ってみたら、期待とはだいぶ違っちゃいましたけど、好アルバムでした。
期待と違ったのは、そもそも本作は、ショーロ・アルバムではないこと。
アレサンドロ・クラメル自身、ショーロのミュージシャンではなく、
ショーロうんぬんのコメントをするのは、
このアルバムには適切じゃないし、誤解のもとだと思いますね。
ベベー・クラメルの愛称を持つというアレサンドロ・クラメルは、
南部リオ・デ・グランデ・ド・スル州ヴァカリア出身のアコーディオン奏者。
出身から察せられるように、アレサンドロはガウーショ(牧童)を自認していて、
19世紀末にイタリア移民によってもたらされた、
アコーディオン音楽が根付いた南部地方の音楽をルーツとする人です。
というわけで、アレサンドロはショーロの音楽家ではないんですね。
ブラジルのアコーディオンは、一般的にサンフォーナと呼ばれますけれど、
それは北東部のアコーディオンを指していて、
南部のガウーショたちが弾くアコーディオンは、ガイタと呼ばれます。
「サンフォーナとガイタはまったく別の楽器だ」と、
ギタリストのマルコ・ペレイラが本作のライナーで強調しているのは、
奏法や音楽性が別物だと言うことですね。
現在リオで活躍するアレサンドロは、南部の音楽をベースに、
ショーロ、サンバ、北東部音楽、ジャズ、クラシックなど多様な音楽を吸収した
音楽性を発揮し、本作でもそれを聴き取ることができます。
古くからのブラジル音楽ファンなら、
レナート・ボルゲッチを思い起こす人もいるんじゃないでしょうか。
そう、アレサンドロは、レナートの後進にあたるガイタ奏者なわけですね。
アレサンドロは、ヤマンドゥ・コスタやガブリエル・グロッシなどと共演、
ヨーロッパなどにもツアーするなどのキャリアを積んでいるそうです。
本作は、売れっ子ベーシストのグート・ヴィルチ、
先日ニーナ・ヴィルチとの共演作を出したばかりのバンドリンのルイス・バルセロス、
7弦ギターのセルジオ・ヴァルデオスと演奏しています。
アレサンドロの自作曲は、
ガウーショらしいのどかさに現代性がミックスされた洒落た感覚があって、
コンテンポラリー・フォルクローレが好まれる現代によくマッチします。
Alessandro Kramer Quarteto "ALESSANDRO KRAMER QUARTETO" Borandá BA0031 (2017)
Renato Borghetti "PENSA QUE BERIMBAU É GAITA" RGE 342.6130 (1992)