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ポップなジャズ・サンバ ジョアン・ドナート

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Joao Donato  BLUCHANGA.jpg

ジョアン・ドナートといえば、ついこの前、宇宙船を操縦している
ぶっとんだ絵柄の新作が出て、ナンジャこりゃと、口あんぐりしたばかり。
息子のドナチーニョとシンセ・ブギー・ファンクを繰り広げるという、
ジャケット同様ぶっとんだ内容で、80越してもシンセをぶりぶり鳴らす
気持ちの若さに、オソレいるばかりなんですが、さすがにこれは手が伸びず。
すると今度は、ぐっと落ち着いたジャズ・サンバ・アルバムが届きましたよ。

終りゆく夏の、まさに今の季節感どんぴしゃのジャケット写真に、目を奪われます。
暮れなずむ海を眺める、男たちの後ろ姿のかなたには、
日が落ちたばかりの、ピンクとイエローに染まった水平線が広がり、
淡いブルーの空が夏の終わりを告げる、
去りゆく夏への名残惜しさとさみしさの入り混じる、いい写真です。

そんなせつなさが、やすっぽい感傷に変わるのを拒むかのように、
ジョアン・ドナートの名とタイトルを、
どーんと大きくデザインしたところが、秀逸じゃないですか。
芸術家気取りなんて、みじんもないところが、ドナートのいいところです。

15年リリースながら、流通が悪かったらしく、これが日本初入荷。
アメリカ時代に書いた楽曲のうち、自身のアルバムに収録したことのなかった
レパートリーを集めたという、正統派のジャズ・サンバ・アルバムです。
ピアノ・トリオに、ギター、パーカッション、2管を含む7人編成で、
各自のソロより、グループ全体のサウンドを重視したアレンジによる
12曲が収録されています。

未発表曲というわりに、聞き覚えのあるリフやハーモニーが、
そこかしこから飛び出します。
独特のコード展開や、凝った転調を駆使しまくりながら、
そうとは意識させず、ポップなメロディで親しみやすく仕上げる、
いつものドナートらしい曲が満載。ラテン・タッチのアレンジもシャレていて、
セルジオ・メンデス好きのボサ・ノーヴァ・ファンには、どストライクでしょう。

どの曲もメロディアスな歌ものに仕上がっているんですが、
1曲だけ異質の、歌向きでないジャズぽいトラックがあると思ったら、
ホレス・シルヴァーの曲でした。やっぱりね。
かっちりとしたリズム隊が繰り出す骨太なグルーヴも心地よく、
今回はドナートのへたくそな歌も出てこないので、
気持ちよくポップなジャズ・サンバを堪能できること、ウケアイです。

João Donato "BLUCHANGA" Mills ACM002 (2015)

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