渋谷で宮崎県の神楽をたっぷり4時間味わったあとは、
下北沢に移動して、奄美の竪琴を聴く、週末の土曜日。
う~ん、なんて贅沢なダブル・ヘッダー。
奄美からやって来たのは、なんの前触れもなく、いきなりCDを出した御年65の盛島貴男。
里国隆の再来というべき、野趣あふれる歌声と竪琴は、
きれいに漂白された民謡ばかりの21世紀の日本に、
まだこんなディープな歌声を持った歌い手がいるのかという驚きを禁じえないもの。
レコーディング・スタジオではなく、自宅の工房で酒を飲みながら、
たった1日で録音したというのは、大正解でしたね。
リラックスした雰囲気がよく伝わってくる傑作です。
ライヴはCD以上の衝撃。とんでもない傑物ですよ、このオジさん。
50歳から歌い始めたとか、見よう見まねで竪琴を作ってきたとか、
とても真には受けられないプロフィール。どこまでほんとうなんだか。
寄席芸で長年鍛えてきたとしか思えない、喋りの巧さ。
歌漫談のような絶妙な語り口で、満員となった会場中のお客さんを一気に引き込んじゃいました。
超弩級な自由さが天然無為のスーダラ流儀を爆発させていて、圧倒されました。
CDでも「十九の春」や「製紙小唄」を歌っていましたけれど、
俗謡うたいというのが、この人の立ち位置のように思えましたね。
「黒の舟唄」「座頭市」「一番星ブルース」「リンゴ追分」が、堂に入ってましたからねえ。
ダミ声の浪曲師さながらのディープな歌声と、機微ありすぎの喋りに堪能した、
初の東京ライヴでありました。
盛島貴男 「奄美竪琴」 ウサトリーヌ UTCD0011 (2015)