奄美の竪琴で思い出したのが、南アフリカのジョハネス・モーララ。
あれは、96・97年頃だったかなあ。
ちょうど里国隆の未発表録音CD『あがれゆぬはる加那』が出てまもない頃に、
ジョハネス・モーララの95年作“MADI A MANABA” を聴き、ぶったまげたんでした。
南アに、里国隆みたいなのがいる~!
びっくりして、そう大騒ぎしたくなるのも無理はない、ダミ声と金属弦の響き。
オートハープをかき鳴らし、グロウルやさまざまな声音を使い分けながら歌う
怪人パフォーマーぶりに、初めて聴いた時は、ただただボー然としてしまいました。
黒眼鏡をかけているところまで里と同じで、この人も盲人のようです。
ジョハネス・モーララは、東部ソトに暮らすペディ人。
19世紀の中頃、ドイツ人宣教師がこの地にオートハープを持ち込み、
ペディの人々はオートハープになじむようになります。
やがてペディの伝統音楽ハレパを、オートハープで演奏する試みが始まり、
40年代末にはチューニングを変えて、
5音音階の楽器に改良されたオートハープが誕生しました。
39年生まれのジョハネス・モーララは、幼い頃は親指ピアノのディペラを弾いて結婚式などで歌い、
17歳から本格的にハレパを演奏し始めたといいます。
オートハープを使われる前のハレパを知らないんですが、
ジョハネスに追唱しながら囃していく、
女性コーラスとのコール・アンド・レスポンスは、アフリカ音楽の典型ですね。
ところがここに、オートハープのミスマッチな響きが加わると、
なんとも不穏というか、奇妙なムードいっぱいの音楽に変貌するのでした。
民俗音楽にみられる、西洋化を受容した<面白音楽>の典型ですね。
「辺境」好きに「発見」されて、妙な騒がれ方をしたり、
持ち上げられやしないかと警戒してるんですが、
いまのところ、その界隈の人たちは、誰も気付いてないみたいです。
Johannes Mohlala "PHALABORWA KA MOSHATE" Motella CDGB32 (1977)
Johannes Mohlala "BANA BA KGWALE" Motella CDGB33 (1979)
Johannes Mohlala "MMATSHIDI" Motella CDGB32 (1983)
Johannes Mohlala (Bana Ba Kgwale) "MADI A MANABA" Gallo CDGMP40614 (1995)