ほとんどというより、皆無といっていいほど国外に流通していないアンゴラ盤CDですが、
ポルトガル経由でごくわずかばかり、手に入れるルートがあります。
個人商店でやっている、おそらくアンゴラ移民のお店だと思うんですけれど、
ぼくはそこにリクエストして、アンゴラへバック・オーダーしてもらっています。
おかげで、すごく時間がかかるうえ、さんざん待たされたあげく、
オーダーした10枚中2枚しか手に入らないなんてことも、しょっちゅう。
まさしくハード・トゥ・ファインドなのであります(泣)。
そんな苦労をしつつ入手したアンゴラ盤の中で、
ひときわ光る作品を制作しているレーベルがあることに気付きました。
それが、前回記事のカリナ・サントスをリリースするシコーチという新興レーベルです。
キゾンバばかりでなく、70年代から活躍するヴェテラン歌手のアルバムも制作していて、
そのサウンド・プロダクションも、カリナ・サントスが好例だったように、ハイ・クオリティです。
今月号の『ミュージック・マガジン』にも、このレーベルの新作で、
フィエル・ディディという男性シンガーのアルバムを紹介したばかりなんですが、
こちらは別の1枚で、アルトゥール・アドリアーノを取り上げましょう。
アルトゥール・アドリアーノは、47年ルアンダのマルサル地区出身のヴェテラン・センバ・シンガー。
74年にキサンゲラに加入し、その後エストレーラ・ネグラ、ディヴアス・ド・リトモで歌手を務め、
05年にセンバ・ジ・オウロ(黄金センバ)賞を受賞しています。
70年代に残したシングル盤は、以前にも話題にしたアンゴラ国営ラジオの復刻シリーズ
“MEMÓRIAS” の一枚としてリリースされているみたいなんですが、ぼくは未入手。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-04-14
当時のアルトゥールのヒット曲“Belita” は、
フランス・ブダのアンゴラ・シリーズ“1972-1973” で聞くことができます。
そして、シコーチから11年になってリリースされた本作が、
アルトゥール・アドリアーノの初のフル・アルバム。
ノドを振り絞るようなパワフルな歌いぶりは、70年代と変わらず元気いっぱい。
少しがさついた粗い声も若い頃のままで、シャープなサウンドと快調なリズムにのせて、
センバやキラパンガを聞かせてくれます。
アルバム・ラストに、さきほどのブダ盤にも収録されていたのと同じ
“Belita” のオリジナル録音が再録されています。
アルトゥールにとって、やはりこの曲はトレードマーク的な代表曲なんでしょうね。
Artur Adriano "N’GOLA YABILUKA" Xicote Produções no number (2011)