今年のブラジルはジャズがきてますねえ。
もちろんジャズは、ブラジルばかりじゃなく、ワールドワイドにきていますけれど、
ブラジルでこれほどフレッシュなジャズが続々リリースされるのは、
長らくインストルメンタル音楽が日陰の存在だったブラジルではまれなことで、
インディ・シーンの活性化を実感します。
デアンジェロ・シルヴァ、ブルーノ・ヴェローゾときて、
今度はこのクレベール・アルメイダです。
前の二人は、ベロ・オリゾンチの若手でしたけれど、こちらはサン・パウロのヴェテラン。
トリオ・クルピーラですでに20年以上活動してきたドラマーで、
バンダ・マンチケイラでも活躍するほか、
さまざまな歌手のレコーディングでひっぱりだこのドラマーですね。
編成はサックス、トランペット、トロンボーンの3管に、
ピアノ、ギター、ベース、ドラムスのセプテート。
遅すぎる初リーダー作ともいえる本作ですけれど、
ヴェテランらしい懐の深い音楽性を示しています。
ブラジル音楽の要素を表出せずにジャズをやる、最近の若手の傾向とは違い、
サンバやマラカトゥ、フォロー、ヴァルサをベースにしたレベールの自作曲は、
90年代から活躍する世代を象徴しているといえるのかも。
マラカトゥの曲で聞かせるホーン・アレンジでは、ホーンがリズムをかたどるなど、
さまざまな細やかなアレンジが施されていて、編曲の才に耳を奪われます。
トリオ・クルピーラでも北東部のリズムを多用していましたけれど、
軽快なドラミングで、ジャズのリズム・フィールに応用していくプレイは、
巧いですよねえ。プレイはスムースなので、さらりと聞けてしまうんですれど、
なかなか手の込んだことを、あちこちでしていますよ。
シンバルでアクセントを付けていくところも、サンバ・ドラムのニュアンスがたっぷりで、
反対に、リズムを細かく割るといったヒップホップからの影響は、
この人のドラミングからは聞かれません。
メロディアスな曲ばかりで、器楽的な曲がないのも、この人の作曲の特徴。
踊り出したくなるポップな曲や、しっとりとした泣きのワルツなど、
どれも歌詞をつけて歌えそうな曲だから、アレンジも歌もの的になるのかな。
ピアノのベト・コレアがアコーディオンを弾いているのも、とても効果的ですね。
ピアノとギターはエルメート・パスコアールの系譜のミュージシャンだそうですが、
ここではエルメート色を感じさせるプレイはいっさい出てきません。
若手の台頭著しいサン・パウロのジャズ・シーンで、
ヴェテランらしい奥行きのあるコンポーズとアレンジに冴えを見せたアルバムです。
Cleber Almeida Septeto "MÚSICA DE BATERISTA" no label MCKPAC0083 (2018)