驚愕!
シカゴ・ブルース黄金時代のサウンドが蘇るだなんて、そんなんアリか?
思わず頬をつねりたくなるような新作です。
ジョニー・タッカーって、
はるか昔にフィリップ・ウォーカーとロウエル・フルスンのバックで
来日したドラマーじゃないですか。えぇ~、こんなに歌える人だったのか!
あ、いや、そういえば、六本木ピットインで観たライヴで、確か1曲だけ歌って、
このドラマー、歌えるなあ、と思ったことがあったっけな。
あれは、フィリップ・ウォーカーの時だったか、ロウエル・フルスンの時だったか、
もう40年も前のことで、記憶もあいまいですけれど。
黄金時代のチェス・サウンドが乗り移ったようなサウンドにのせて、
ハウリン・ウルフばりのタフなブルース・ヴォーカルが炸裂するんだから、たまりません。
チェス・サウンド一辺倒ではなくて、曲により多彩なサウンドを演出していて、
コブラ時代のオーティス・ラッシュやファイア時代のエルモア・ジェイムズ、
そのほかにも、ヒューバート・サムリンやリトル・ウォーターなど、
往年の名手たちのサウンドが、これでもかというくらい迫ってくるんだから、
これ聴いて悶絶しないブルース・ファンはいないでしょう。
ちなみに、バックを務めるのは全員白人。
ブルースが人類の遺産になったことを、これほど実感させるアルバムもありませんね。
ジョニー・タッカーのコクのあるディープな歌いぶりには、
たっぷりとした満腹感が得られます。
全15曲、ジョニー・タッカーのオリジナルというのにも脱帽です。
ゴリゴリのシカゴ・ブルースあり、
サム・クック・スタイルのソウルもありという芸幅の広さで、
これほどの才能を、なぜこれまでしまい込んでいたんでしょうねえ。
いや、じっくりと時間をかけて、熟成させてきたのかもしれないなあ。
クレジットにはスタジオ・ライヴで録られたとあり、
オープン・リールを使ったモノラル録音というのも、
イマドキ贅沢なレコーディングといえます。
この濃密な空気感は、間違いなくそんなレコーデイング環境を反映したもので、
あとからいくらでも編集できるデジタル・レコーディングじゃあ、
このダイナミクスは出ないでしょう。
まごうことなく、2018年のベスト・ブルース・アルバムです!
Johnny Tucker "SEVEN DAY BLUES" Highjohn 007 (2017)