エチオピアから、ナイジェリアのティワ・サヴェイジや
南アのリラに匹敵するポップ・レディの登場です。
15年のデビュー作でも、キリリとした歌声や、
弾けるポップ・サウンドにのせてハツラツと歌うさまが、強い印象を残しましたね。
従来のエチオピアの女性歌手にない現代的なオーラをまとっていて、
新世代の登場を予感させるのに、十分なアルバムでした。
プロダクションも、従来のエチオピアン・ポップとは段違いのクリエイションで、
ヒップホップR&B、ロック、EDM、レゲエの咀嚼ぶりは、
ナイジェリアや南アのポップとまったく遜色がなく、舌を巻きました。
エチオピアにもすごいクリエイターがいるんだなと瞠目したものです。
ただ残念だったのは、汎アフリカン・ポップスに照準が当たりすぎていて、
ご当地エチオピア色がきわめて希薄だったこと。
アムハラ色のある曲もわずかにありはしたものの、
アルバム全体の中では影が薄く、
それが、ちょっともったいないなあと思ったんでありました。
ところが、3年ぶりとなったセカンド作では、
エチオピアの田舎の朝の風景が浮かぶ生活音を背景に、
サックスが吹かれるオープニングのイントロに、おっ、と耳をそばだてられました。
続いて、トランペットとサックスの合奏に、ケベロ(太鼓)のビートと
ハチロクの手拍子が絡むところで、もう身を乗り出してしまいましたよ。
アムハラの匂いが香り立つ2曲目は、マシンコやワシントをフィーチャリングしつつ、
コンテンポラリーな伝統ものとは一線を画す斬新なアレンジが施されていて、
こういうのが聴きたかったんだよと、小躍りしてしまいました。
デビュー作同様、プロダクションのモダンぶりは、エチオピアのトップ・レヴェル。
曲ごとカラフルな意匠で楽しませてくれますが、
そのなかで、アムハラのメロディやリズムを絶妙に生かしているのが、今作の良さです。
7曲目の‘Sin Jaaladhaa’ のアムハラ独特の民俗的なメロディを
とびっきりジャジーに洗練したアレンジも、実に新鮮。
ハーモニー、コード感、リズムのいずれをとっても、
これまでのエチオピアン・ポップスになかったセンスを感じさせます。
この方向性ならば、海外のプロデューサーが目をかけること必至というか、
ご本人やプロダクション・サイドも、
インターナショナル・マーケットをネラっているんだろうから、
うまくチャンスがつかめるといいですね。
Betty G. (Bruktwit Getahun) "MANEW FITSUM" Sigma Entertainment & Events no number (2015)
Betty G "WEGEGTA" Yisakal Entertainment no number (2018)