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祝祭のフォーク・ジャズ チャールズ・ブラッキーン

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アンソニー・ブラクストンとデレク・ベイリーのデュオをきっかけに、
ブラクストンのCDやら、昔よく聴いたジャズCDを芋づる式に聴き返していたら、
チャールズ・ブラッキーンの88年シルクハート盤にたどり着きました。

ああぁ、やっぱ、素晴らしいわ。ぜんぜん色褪せてませんね。
祝祭感たっぷりのメロディを、チャールズ・ブラッキーンのテナー・サックスと、
オル・ダラのトランペットが合奏するタイトル曲の冒頭から、気分はウキウキ。
ニュー・オーリンズ・ムード漂う、元気モリモリわいてくる曲なんですけれど、
また2曲目の‘Banner’ がまるで南ア・ジャズみたいなメロディで、
頬が緩んでしまうんです。

こんなにおおらかで、懐の深い曲を書けるジャズ・マンなんて、
当時のアメリカのジャズ、
とりわけフリー/ロフト・ジャズの近辺では、希有な存在でした。
ダラー・ブランドに通じる、雄大な南ア・ジャズを思わせるんだから、感涙もんです。
チャールズの出身であるオクラホマの大平原を想わすその楽曲からは、
彼のフォーク・ルーツが垣間見えるように思えます。

祝祭感たっぷりの曲にのせて歌うチャールズの武骨なテナーが、いいんです。
小難しいことなどしない、大きくゆったりと吹くテナーは、
ガッツ溢れるまさにブラックネスの塊。
シンプルともいえる、そのわかりやすさは、
なぜこれがジャズのメインストリームにならないのかと、ずっと思っていたし、
30年経っても、その感想は変わりません。

ファラオ・サンダースのテクニカルな絶叫や、
ビリー・ハーパーの高度な技術に裏打ちされたブラックネスも、十分スゴ味は感じますけど、
チャールズの魅力は、ファラオやハーパーよりもっと素朴で、
ゴツゴツとした演奏の触感にあります。

ぜんぜん洗練されていない、田舎臭いテナー表現が、
聴く者の根源的なところを揺り動かして、身体の細胞を活性化させるんですよ。
サックスから押し出されるチャールズのブロウは、
どれも確信に満ちていて、堂々たる風格を感じさせます。

フレッド・ホプキンスにアンドリュー・シリルという、
最強の骨太リズム・セクションを従えた88年の名作、
ぜんぜん話題にもならなかったのも、
当時の日本のジャズ評論のレヴェルを考えれば、むべなるかな。
ジャズをひたむきに求める人だけが出会えた、逸品だったのでした。

Charles Brackeen "WORSHIPPERS COME NIGH" Silkheart SHCD111 (1988)

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