この泥臭さ!
ひび割れた声でヴァイタルに歌う、ヴォーカルの味わいがたまりません。
ティグリニャ独特のどすこいツー・ビートにのせて、
絶妙なこぶし使いを聞かせる歌いっぷりにホレボレするばかりです。
こぶし使いがライのハレドに似ているような気がするのは、ぼくだけですかね。
そういえば顔立ちや、ちりちりヘアというルックスまで似ているじゃないですか。
歌える顔の典型なのかもしれませんね。
ウチコミにサックス、ギターによるコンテンポラリーな伝統サウンドは、
十年一日といえる平凡さですけれど、ヴォーカルの良さを引き立てれば、
それで十分じゃないでしょうかね。
鍵盤系の音色はよく選び抜かれていて、
レイヤーしたサウンドがチープな印象を与えないし、
サックスとベースがユニゾンを取ったり、別のラインを作ったりしながら、
安定したグルーヴを生み出しています。
ティグリニャの曲は、一本調子になりがちなところもありますけれど、
本作にはヒネリのあるメロディや、珍しいコードを聞かせる曲もあって、飽きさせません。
とはいえ、なんといっても聴きものは、主役アベベ・アラヤの歌いぶり。
粗塩の独特の苦みを思わすヴォーカルの味わいは、格別です。
Abebe Araya "GIZ’E" no label no number (2018)