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その他好き セルジオ・アルバッシ

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Sérgio Albach  CLARONE NO CHORO.jpg

「その他」が好き。

こればっかりは、性分なんでしょうねえ。
世の流行やメインストリームに反応しないハグレ者ゆえ、
人が目もくれないところを、熱心に探し回る人生を送ってきたんであります。

耳慣れた音楽より、未知の音楽を求めては、
「その他」コーナーに放り込まれた、分類不可能や評価の定まらないレコードを漁り、
聞いたことのない楽器があれば、その音色を知りたくて世界各地の民俗音楽を聴き、
ジャズの専門店に足を運んでは、「その他楽器」のコーナーで、
念入りにレコードを探してきたもんです。

そうしてジャズの場合、ドロシー・アシュビーのハープ、
トゥーツ・シールマンスのハーモニカ、マイケル・ウルバニアックのヴァイオリン、
オセロ・モリノーのスティール・ドラム、
ハワード・ジョンソンのチューバと出会ってきました。
さらには、ユーフォニウム、フレンチ・ホルン、バスーン、バグパイプ、ほら貝なんて、
「その他楽器」上級者(?)向きのプレイヤーも知りましたけれど、
バス・クラリネットはエリック・ドルフィーという大物がいたので、
それほど「その他」感はなかったかな。

とはいえ、ブラジルのショーロでバス・クラリネットというのは、初耳です。
クラリネットならば、ルイス・アメリカーノに始まり、
カシンビーニョ、アベル・フェレイラ、パウロ・モウラ、
パウロ・セルジオ・サントスという歴代の名手を、
大勢輩出してきたショーロですけれど、
バス・クラリネットを吹く人というのは、記憶にありません。

ブラジルではクラロンと呼ぶことも、今回初めて知りましたが、
本作の主役セルジオ・アルバッシは、
ブラジル南部パラナ州の州都クリチーバの音楽家。
文化都市として有名なこの地の、
クリチーバ吹奏楽オーケストラの音楽監督も務めていて、
本作が2作目とのこと。

セルジオのクラロンのほかは、7弦ギター、ギター、バンドリン、
パーカッションという典型的なレジオナル編成で、
レパートリーはショーロの古典曲がずらり並んでいます。
耳馴染みのあるメロディをバス・クラリネットならぬクラロンで聴けるので、
この楽器の響きをじっくりと味わうことができますね。

吹奏楽オーケストラを率いる人だけに、
楽器の鳴らし方はジャズ・ミュージシャンとは違って、
倍音の少ない、芯のあるクリアな音色を聞かせます。
なめらかなパッセージや軽やかなタンギングは、高度なテクニックに裏打ちされていて、
木管楽器が持つ深みのある、優美な音色を奏でます。

アルバムのハイライトは、クラリネット奏者ナイロール・プロヴェッタをゲストに招き、
デュオ演奏したアベル・フェレイラの名曲‘Chorando Baixinho’。
クラロンとクラリネットの音色の違いが際立つ、聴きものの演奏となっているんですが、
こうして聴くと、バス・クラリネットって、けっこう音域広いんですねえ。
この楽器が持つ豊かな表現力を教えられた思いがする1枚です。

Sérgio Albach "CLARONE NO CHORO" Tratore SA01CD (2018)

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