バンドの名義が添えられているものの、
主役のフィドル以外のメンバーは、メロディオンとギターの3人だけ。
最小人数バンドを率いるレイチェル・マクシェインは、
イングランドのフォーク・ビッグ・バンド、ベロウヘッドで、
フィドルとチェロを担当していた人のこと。
ベロウヘッドといえば、08年のセカンド作“MATACHIN” をよく聴いたけど、
レイチェルの名を意識したのは、今回が初めてです。
ソロ・アルバムとしては、デビュー作から9年ぶりというのだから、
ずいぶんと長いインターヴァルです。
さすがにキャリアを積んだ人なので、演奏にはゆとりがあるし、アイディアも豊富。
イングランドの有名な古謡‘Two Sisters’‘Sheath And Knife’や、
イングランドの古い詩にレイチェルが曲をつけた‘Sylvie’など、
ベロウヘッド時代のワールド・ミュージック的なアプローチとは違って、
真正面から伝統音楽に向き合った作品となっています。
きりっとしたレイチェルのシンギングがいいんです。
粒立ちのよいギターの響きと、豊かなメロディオンの音色によく映えるヴォーカルで、
これぞイングリッシュ・フォークといった味わいを感じます。
レイチェルが弾くヴィオラの深い音色も、演奏に奥行きを与えていて、
たった3人とは思えないサウンドを生み出していますよ。
ゲストには、プロデューサーのイアン・スティーブンソンのウッド・ベースのほか、
マンドリン、エレクトリック・ベース、パーカッションが参加。
メロディオン奏者ジュリアン・サットン作のインスト曲メドレーには、
オーボエが加わり、映像的なサウンドスケープを繰り広げるほか、
アルバム・ラストの‘Green Broom’では、
トランペット、トロンボーン、チューバのブラスを加えて華やかに締めくくり、
気持ちの良い聴後感を残します。
Rachael McShane & The Cartographers "WHEN ALL IS STILL" Topic TSCD596 (2018)